「Inventor」の中には工作機械が全部入っている! 電動バイク「zecOO」開発秘話:DMS2015(4/4 ページ)
「第26回 設計・製造ソリューション展(DMS2015)」で、オートデスクは「Autodesk Inventor」のユーザートークショーを実施。電動バイク「zecOO(ゼクー)」のデザインを担当したznug designの根津孝太氏と、車体製造を担当したオートスタッフ末広の中村正樹氏がzecOOの開発秘話を紹介した。
お金よりも疲れにガックリ
司会 ――zecOOのデータを拝見しましたが、その作り込みには驚かされました。モデリングだけでなく、ダイナミックシミュレーションも実施されているんですよね。
根津さん 中村さんがうれしそうに言うんですよね。「根津くん、ここをこうやると動くんだよ!」って(笑)。
中村さん やはり2次元と違うのはすき間とか、作動したときのクリアランスとかが見た目でよく分かるので助かりますね。zecOOをご覧いただくと分かりますが、スイングアームがあって、ホイールがあって、ハンドルを切ったときの逃げのクリアランスがギリギリを攻めているんですよね。実は、初号機のzecOOを作った際は2次元で設計していたので、そのクリアランスが微妙だったんですよ。とにかく、Inventorを導入してからは試作の失敗がなくなりました。
司会 ――試作ってお金が掛かりますからね。
中村さん コストもそうなんですが、私たちは全部自分たちで作っているからとにかく疲れるんですよ。もうね、お金じゃないんです(笑)。失敗すると社員に「社長、これもう1回作るんですよ!」って怒られちゃうんですね。
司会 ――モデリング以外でこれからInventorをもっと活用していきたいシーンはありますか?
根津さん 自分たちが作ったzecOOの信頼性がどのくらいあるんだろうか? ということを自分たちできちんと評価したいという思いはありますね。
中村さん そう。Inventorの有限要素解析の機能を理解して、きちんと活用していければ私たちみたいな小さなカスタムバイク屋でも世界の企業と一緒に仕事をやっていけると思っています。モノを作っている人間は、感覚的に「ここはこれだけ角を取っても壊れない」という経験則があるんです。でも、それを数字で証明できれば、自分も納得できるし、お客さまも納得してくれます。そうなれば本当に良いモノが作れるのではないでしょうか。
根津さん きっと中村さんなら有限要素解析もすぐにマスターできると思いますよ。
司会 ――では、今後2人で挑戦してみたいモノ、作りたいモノがあれば教えてください。
中村さん&根津さん いっぱいあるよねー(笑)。
根津さん 僕たちは、思い付いたらすぐやりたい人たちなんです。
中村さん 朝起きて、ぱっと思い付いたものをすぐにカタチにして、出来上がったモノを後で見て、やっぱり使えないな……なんてこともよくありますが、そういうことをすぐにできるのがInventorの素晴らしさだと思います。
司会 ――最後に、2次元を活用していて、なかなか3次元CADへ踏み込めないでいる方へ一言お願いします。
中村さん 2次元は2次元ですごく良い面もあるが、3次元は本当に便利です。導入についても、実際にモノづくりをしている人であれば問題ないと思います。3次元データだと関係者とのコミュニケーションがスムーズに進められます。根津くんのようなデザイナーさんとのやりとりには欠かせないツールではないでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- フリーフォーム機能や他社CAD連携、3Dプリンタ利用がさらに強化された「Inventor 2016」
オートデスクは、製造業向け3次元CADソフトウェア「Inventor」の最新バージョン「Inventor 2016」を発表した。ユーザーからの声を反映し、フリーフォーム機能の強化など使い勝手が向上。さらに、他社CADデータとの連携や3Dプリンタ利用を支援する機能などが強化された。 - 自動車のコンセプトデザインは「Maya」から「Alias SpeedForm」へ
オートデスクは、自動車のデザイン業務を支援する新たなアプリケーションと、既存アプリケーションの新バージョンを発表した。新製品の1つである「Alias SpeedForm」は、「Maya」と「Alias」が持つ“良さ”を取り入れた自動車デザイン向けコンセプトモデラーとして位置付けられている。 - オートデスクが意匠設計ツールを刷新、初期デザイン意図を開発工程全体で生かす
オートデスクは、自動車の意匠設計に広く用いられているサーフェスモデラー「Alias」とビジュアライゼーション用ツール「VRED」の最新バージョンを発表した。 - 「コペン」の着せ替えパーツが3Dプリンタで作れる「Effect Skin」とは
ダイハツ工業が、2人乗り軽スポーツ「コペン」の“第3のモデル”「CERO(セロ)」を発表した会見では、コペンの最大の特徴である樹脂外板の着せ替えを中心とした「DRESS-FORMATION」の新たな展開が明らかになった。 - ベンチャー企業や町工場で面白製品開発にはげむ面々が一堂に集結
面白製品を“自分の手で”世に送り出す夢をかなえるには? ――MONOist主催のイベント「MAKERSたちのビジネスをつなぐ、3Dツールと町工場」では、日々、面白製品を開発する人たちによる生トークをお届けするイベントをお届けします。“一人家電メーカー”ビーサイズ八木さんの3Dプリンタ・トークにも要注目です。