“業務用”スマートグラスはこう使う:FAニュース(2/2 ページ)
セイコーエプソンは同社のスマートグラス「MOVERIO」シリーズを、業務用途に特化させた新製品「MOVERIO Pro BT-2000」を発表した。製造、物流、建設など幅広い分野での活用を提案していく。
「製造現場に革新をもたらす」
会見に登壇したエプソン販売 代表取締役の佐伯直幸氏は、「MOVERIOシリーズはコンシューマー向けに開発した製品だった。しかしその販売を進める中で、製造や物流の現場で使いたいという声を多く頂いた。日本ではICT技術を活用した産業競争力の強化や、熟練工の不足に対応したビッグデータ活用などが進んでおり、作業現場におけるスマートデバイスの利用が期待されている。さらに手がふさがるスマートフォンやタブレット端末では解決できない課題の解決に向け、ウェアラブルデバイスへの期待が高まっている。エプソンはBT-2000で作業現場に革新をもたらす」と意気込みを語った。
では実際の作業現場でどのように利用するのか。会見では利用例の1つとして、作業者がBT-2000を通して遠隔地のオペレーターから指示を受けて産業用ロボットのメンテナンスを行うというデモンストレーションが行われた。作業の手順に合わせて産業用ロボットの図面を表示させたり、オペレーターから「次は反対側のカバーを開けてください」「バンドルのたわみを確認してください」というように作業手順を指示したりできる様子が披露された。
さらにエプソンはBT-2000の開発過程で、複数の企業と同製品を利用した実証も重ねており、会場ではその内容も展示された。その一部を紹介する。
作業員の動きを“見える化して作業効率を改善
国際航業はBT-2000と同社の位置情報ソリューションを組み合わせたサービスを展示した。BT-2000に搭載されているIMUやGPSを活用して、作業現場で作業員がどのように移動したかという情報を集め、その動線を“見える化”するというものだ。作業員の移動経路を分析することで、業務プロセスや機材の配置換えといった作業工程の改善に活用しようという狙いだ。
作業員に危険を通知
新日鉄住金ソリューションズが展示したのは、点検や保守作業中の作業員にBT-2000を通して危険を通知するサービスだ。例えば点検を行う必要があるものの、高温であるため作業員が直接触れると危険な機器に事前にビーコンを取り付けておく。その機械にBT-2000を装着した作業員が近づくと、視野内に「危険」などのアラートを表示させるという仕組みだ。
販売目標は3年間で1万台、海外展開も
エプソンはBT-2000の販売目標について、今後3年間で1万台を想定。これは日本国内での目標だが、同時に欧州や米国でも販売する。実際の販売に関してはシステムインテグレーターなど複数のパートナー企業と連携し、さまざまな作業現場の個々のニーズに合わせたアプリケーションを開発していく方針だ。2015年9月の販売に先駆け、同年7月をめどにアプリケーション開発者向けにハードウェア仕様書、開発ガイド、ソフトウェア開発キット(SDK)をエプソンのWebサイト上で公開する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ウェアラブル端末とモノのインターネットは「現場」の救世主となるか?【前編】
製造現場や保守現場、建築現場など、多くの業種においてさまざまな「現場」が存在しているが、その現場が今“悲鳴”を上げていることをご存じだろうか。その救世主として今急速に注目を浴び始めたのが、ウェアラブル端末とIoT(モノのインターネット)だ。本稿では、前編で「現場」の現状となぜウェアラブル端末に注目が集まるのかについて、後編でICTを活用した「現場」の将来像について解説する。 - モノづくりでITを乗りこなせ! 富士通がウェアラブルとバーチャル技術を提案
「CEATEC JAPAN 2014」で富士通は、仮想技術を活用した仮想モノづくりや、ウェアラブルデバイスを活用した製造・保守現場の革新提案を行った。 - モノに触れるだけで情報が得られる「グローブ型ウェアラブルデバイス」――富士通研
富士通研究所は、保守・点検作業をタッチとジェスチャーで支援する「グローブ型ウェアラブルデバイス」を開発。NFCタグ検知機能と作業姿勢によらないジェスチャー入力機能により、端末操作をすることなく自然な動作だけで、ICTを活用した作業支援、結果入力などが行える。