クリーンディーゼルへ展開を広げるトヨタの「高熱効率・低燃費エンジン群」:エコカー技術(5/6 ページ)
トヨタ自動車が新開発した排気量2.8l(リットル)のクリーンディーゼルエンジン「1GD-FTV」は、同社が2014年4月から展開を始めた「高熱効率・低燃費エンジン群」の1つである。本稿では、1GD-FTVの開発コンセプトや採用した新技術を解説しよう。
(3)触媒システムのリニューアル
3つの取り組みのうち最後になるのが「触媒システムのリニューアル」である。自動車おける触媒システムとは、排気ガス内の有害な物質を無害な物質に変えるシステムのことである。ガソリンエンジンでは三元触媒が一般的だが、排気ガスに含まれる有害物質の構成が異なるディーゼルエンジンでは、別の触媒システムを用いる。
GDエンジンの開発における「触媒システムのリニューアル」は、酸化触媒(DOC)、PMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、NOxを分解する後処理システム(DeNOx)という3つの要素から構成されている。これら3つの要素を、排気ガス規制をはじめとする世界各地域それぞれの需要に適合するよう組み合わせて提供する。
例えば、アジアや中近東、南米では、DOCを進化させて「高浄化DOCシステム」だけで対応する。タイ向けに発売したハイラックスの1GD-FTVでは、この高浄化DOCシステムを使用している。オーストラリアやロシアでは、高浄化DOCシステムにDPFを組み合わせる。なお、高浄化DOCシステムとDPFについては、KDエンジン比で30%小型し、触媒に必須の貴金属の使用量も半減したという。
排気ガス規制が厳しい国内と欧州向けには、DeNOxである尿素SCR(選択触媒還元)システムも追加する。尿素SCRシステムは、Daimler(ダイムラー)やBMWといったドイツの自動車メーカーが先行して採用しているが、トヨタ自動車では初の採用事例になる。
尿素SCRシステムでは、排気ガスに含まれるNOxをできる限り外部に排出しないように尿素水溶液を噴霧して反応させ、最終的には窒素と水に分解して排出する。GDエンジンの尿素SCRシステムは、最大で99%のNOx浄化率を達成している。これにより、国内のポスト新長期規制や欧州の「Euro6」といった排気ガス規制に適合。いわゆる“クリーンディーゼル”と呼べるエンジンになった。
尿素SCRシステムはSCR触媒と尿素分散モジュール、尿素タンクから構成されることもあり、追加システムとしてはサイズが大きい。そこで、新開発の尿素分散モジュールの採用により小型化を図っている。また、北欧のような寒冷地でも尿素SCRシステムが問題なく機能することを確認するため、フィンランドでの走行試験を重ねたという。
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