クリーンディーゼルへ展開を広げるトヨタの「高熱効率・低燃費エンジン群」:エコカー技術(4/6 ページ)
トヨタ自動車が新開発した排気量2.8l(リットル)のクリーンディーゼルエンジン「1GD-FTV」は、同社が2014年4月から展開を始めた「高熱効率・低燃費エンジン群」の1つである。本稿では、1GD-FTVの開発コンセプトや採用した新技術を解説しよう。
(2-c)燃焼エネルギーの高効率変換
そして「燃焼エネルギーの高効率変換」では、ピストン上端の周辺部に、断熱性とともに放熱性も高いシリカ強化多孔質陽極酸化膜(SiRPA)を塗布する燃焼室表面コーティング技術「TSWIN(Thermo Swing Wall Insulation Technology)」を採用した。
燃焼〜膨張行程時には、SiRPAの高い断熱性を利用し燃焼ガスが膨張する力をピストンにそのまま伝えられるようにする。ピストン上死点付近におけるピストン上端面の温度は、KDと比べて160℃高くなっているという。一方、吸入行程時には、SiRPAの高い放熱性を利用してピストン上端面の温度を下げ、気筒内部に流入する吸気の密度を高められるようにする。ピストンが最も下の位置にくるピストン下死点付近では、KDと比べて20℃下がっている。
「世界初」(トヨタ自動車)というTSWINの採用により、燃焼時の冷却損失を最大約30%低減できるとする。もちろん損失の低減は熱効率の向上に寄与する。
(2-d)小型ターボチャージャーの開発
「燃焼の革新」の取り組みでは、燃焼ポテンシャルを拡大する技術として、過給機であ るターボチャージャーも新開発している。エンジンの小排気量化などを図った「エンジン基本骨格の最適化」と一体化して開発を進めた、小型高効率の可変ジオメトリターボチャージャーである。フルバックタービンホイールや高流量ベーンなどの新規採用によってタービン効率を向上しつつ、高剛性/高効率のインペラを採用し、電動アクチュエータの応答性も高めている。これらの施策により、KDのターボチャージャーと比べて約30%の小型化と、約50%の過給圧上昇率の向上を実現した。
またこの新開発ターボチャージャーが、トヨタ自動車の内製であることも特徴の1つだ。一般的にターボチャージャーは、IHIや三菱重工業、Borg Warner(ボルグワーナー)、Honeywell(ハネウェル)の4社が供給することが多いが、これまでトヨタ自動車は内製を続けてきた。新開発のGDエンジンでも内製を採用したことになる。
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