ジャガーとランドローバーの“らしさ”はデザインとエンジニアリングで表現する:ジャガーランドローバー CEO インタビュー(3/3 ページ)
日本ではラグジュアリーカーの印象が強いジャガーランドローバーだが、インドのタタ・モーターズの資本を得て経営が安定して以降、元来のテクノロジー志向を強めている。CEOを務めるラルフ・スペッツ氏に、次世代技術開発の方向性や、ジャガーとランドローバー、両ブランドの“らしさ”の表現方法などについて、自動車ジャーナリストの川端由美氏が聞いた。
初代モデルより低くスポーティに見える2代目「XF」
スペッツ氏へのインタビュー当日、カラム氏が“新世代のジャガー”の第1弾として2008年に世に送り出した「XF」の第2世代モデルとなるプロトタイプのプレビューが行われた。カラム氏によるこのプレビューの模様を少々引用しよう。
「ジャガーのスポーティネスを象徴する3ボックスサルーンの位置付けで、旗艦モデルである『XJ』とも共通するDNAを持たせることにより、ひと目見て『ジャガーだ』と分かるようにデザインしました。具体的には、強いショルダーラインを1本入れて、スリークでシンプルなスタイリングで、質感の高さを強調しました」(カラム氏)
キャビン中央がこんもりとしていた初代XFと比べると、サイドウィンドウを上下に狭めたスタイリングを得たことで、より低くスポーティに見える。「リターングラフィック」でCピラー周辺を強調する手法は、過去の名車である「ジャガー・マークX」からの引用だ。キャビンが長く、伸びやかなプロファイルを持たせつつも、車両側面の窓ガラスが3つある6ライトにすることで後席の居住性にも配慮されている。後ろ姿についても、水平のラインが近年のジャガーのサルーンらしい印象を生み出している。
室内は、XJと比べてコンパクトなぶん、金属加工を施したダッシュボードなどを採用して、よりシンプルで力強い演出をしている。古典的でエレガントな演出が施された後席は、カラム氏いわく「Great Old Days」を意識したものだという。
「過去の名車であり『Eタイプ』や『Dタイプ』からインスピレーションを得たスタイリングですが、同時に、Cd値を初代の0.27から0.26へと低めるといった近代的な挑戦もしています」(カラム氏)
初代XFで表現した「ラグジュアリー」はそのまま保ち、インテリアの質感やリアシートの居住性を高めた。衝撃を与えたアルミ性プラットフォームは2世代目へと進化し、75%がアルミ化されて、200kgも軽量化された。1点で6kgもあるサイドパネルまでアルミ製になった一方で、剛性は28%も高められている。
ボディについては、ホイールベースを41mm伸ばし、居住スペース、レッグルーム、ヘッドルームを拡大した上で、荷室容積を540lに拡大している。搭載されるパワートレインは、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンそれぞれで3機種。ディーゼルは排気量2lの直列4気筒ターボ(163ps/180ps)と排気量3lのV型6気筒(300ps)、ガソリンは排気量2lのターボ(240ps)、排気量3lのV型6気筒スーパーチャージャー付き(340ps/380ps)となる。
これらのうち、直列4気筒ディーゼルエンジンは新設されており、80kgも軽量化されている。驚くことに、CO2排出量は104g/kmと、ハイブリッド車並みの低さである。四輪駆動システムも新設計される予定で、こちらは効率を高めるとともに60%も軽量化される。加えて、次世代車載情報機器を導入し、近代的なアップデートを施している。
筆者紹介
川端由美(かわばた ゆみ)
自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。
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