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原価低減に欠かせない科学的アプローチを学ぶ【前編】実践! IE:磐石モノづくりの革新的原価低減手法(7)(4/4 ページ)

革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について解説する「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」ですが、今回からは「原価低減推進のために必要な科学的アプローチの手法」についてお伝えしています。今回は主に「三現主義」と「PDCAサイクル」について解説します。

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仮説と検証で「不測の事態」を排除

 何かを改善しようとするときや新しいルールを検討するときには、「仮説と検証」のプロセスをしっかりと行うことが、曖昧さを排除していくためにも大切です。この事前検討をおろそかにすれば、不測の事態が発生することにつながります。

 国語辞典で仮説と検証を引いてみると、「仮説:一定の現象を統一的に説明しうるように設けた仮定。ここから理論的に導きだした結果が観察・計算・実験などで検証されると、仮説の域を脱して一定の限界内で妥当とする真理となる」、「検証:ある仮説から論理的に導き出された結論を、事実の観察や実験の結果と照らし合わせて、その仮説の真偽を確かめること」と説明されています。

 これまで説明してきた三現主義とPDCAサイクルの項目でも、仮説と検証の重要性を平易に説明してきました。しかし多くの企業がさまざまな部分を曖昧にしたまま改善活動や業務ルールを作っており、それに起因して発生している不具合の是正に、多くのエネルギーを費やしている実態があります。企業活動の中で日常的に起こる不測の事態の多くは仮説と検証をしっかりと行うことで予測が可能です。

 その場合、改善計画の仮説を立て、その仮説が成立するための条件を選択・設定し、繰り返し実践することでこの成立条件と仮説を検証し、検証結果が否定された場合にはどのように対処、あるいは修正を加えていくのかという思考プロセスも重要です。

 「仮説」では“ありたい姿”を具体的に描き、次に、その仮説が成立する条件を書き出しましょう。その成立条件の達成に向け、改善実践と検証を繰り返しながら、現状を変更していく執念が「仮説」を「真理」へと変えていきます。

“現場を数値で捉える”ワークサンプリング法とは?

 改善を始めるには、現場がどのような状況にあるかを数値で把握して、その結果を分析してみる必要があります。その分析手法として広く活用されているものの1つに「ワークサンプリング法」(以下、WS法)があります。

 WS法は稼働分析(Production Study)の1つで、作業状況のサンプリング観察により、主体作業(作業対象の形状、寸法、性質、状態などを実際に変化させる作業)だけでなく、段取作業(作業命令の受領、作業場所の準備、機械・工具の準備、後始末などの作業)、余裕(工場生活において作業者自身では避けることの出来ない不規則に発生する遅れ)などの作業中に起こる全ての活動を調査・分析して、作業そのものに加え、作業上のさまざまなな管理方式の改善案や標準時間(Standard Time)を設定するための余裕率(Allowance Rate)を求めようとする手法です。

 つまり、WS法は人や機械の活動の状況を統計的に把握する測定方法の1つです。この観測結果により、人や機械の稼働分析、あるいは職場の不具合の探求などができ、改善の糸口を見いだすことができます。WS法には、次のような特徴があり、用途も広く、実際的で便利な手法ですから繰り返し活用して慣れていってください。

WS方法の特徴

  1. 観測が瞬間観測であり1人の観測員で多数の対象を観測でき経済的である
  2. 観測員の訓練を必要としないため、誰でも簡単に観測できる
  3. 観測回数の多少によって、その観測結果の誤差を計算によって明確にすることができる。観測回数が多いほど、誤差は小さくなる
  4. 遠く離れたところからの瞬間的観測であるので、観測される側に与える心理的影響が、他の観測方法に比べると少ない

◇     ◇     ◇     ◇

 今回の最終項に「ワークサンプリング法とは?」と題して、次回の詳細説明に先立ち、その概要について簡単に説明しておきました。WS法は、作業や行動している被観測対象に対して、主に人手によりその状態を瞬時に観測し、分析目的に応じた分類項目に該当する観測回数と全観測回数との比率から、各項目の大きさを推定します。一般的には、次のような事象を分析対象とします。

  1. 手待ちの原因
  2. 段取りや遅れの比率
  3. 作業者や機械の稼働状況
  4. 標準時間、余裕率、稼働率

 WS法はさまざまなIE手法の中でも、極めて有用な手法です。次回より、その詳細手順について説明していきたいと思います。ご期待ください。

筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。




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