中小企業の収益力、“差”を生むのはイノベーションへの意欲:中小企業白書(4/4 ページ)
グローバル化の進展や長引く経済不況により、収益力の強化が求められている中小企業。政府が発表した2015年版「中小企業白書」では、中小企業を取り巻く環境の変化や、収益力の強化に向けて取り組むべき複数のポイントに関するの分析結果が公表された。本稿ではその概要を紹介する。
採用手段の多様化が必要に
中小企業の人材に関する調査では、先述した新たな販路開拓における人材不足のみならず、研究開発・製造、IT関連、経営などのさまざまな分野において中核となれる人材が不足しているという認識が強いことが分かった。「人材を確保できていない」と答えた企業は36.3%で、人材を確保できない理由として最も多いのは「人材の応募が無い(56.8%)」となっており、続いて「人材の応募はあるが、よい人材がいない(39.9%)」という結果となっている。
中小企業における中途人材の採用手段では、「ハローワーク」と親族を含む「知人・友人の紹介」が利用実績の多くを占めている。採用実現率(採用実績)が最も多いのは「知人・友人の紹介」で、実現率は80%を超えている。続いて「取引先・銀行の紹介」「ハローワーク」の順となっており、どちらも実現率は70%以上だ。
最も採用実現率が低いのは「自社Webサイトでの告知」で、実現率は約40%程度となっている。中小企業の人材採用においては、“顔が見える採用手段”が重要視される傾向が強く、極めて限られた手段によって人材の採用が行われていることが分かる。白書では、さまざまな採用手段による採用実現率を高め、人材を確保する手段の多様化を進めていくことが必要という提言がなされた。
さらに白書では新たな人材の確保だけでなく、既存の人材の定着や育成に向けた取り組みの重要性も指摘されている。中小企業における就業者の3年目離職率は中途採用が3割、新卒採用は4割という状況だという。その一方で、企業側からは「人材の指導・育成を行う能力がある人材が不足している」という課題が最も多く挙げられている。
こうした人材不足が大きな課題となる一方で、経営資源が限られる中小企業では個社単位で取り組みには限界がある。白書ではこうした課題の解決方法の1つとして、各社の経営資源や人材育成に関するノウハウを共有・連携や、地域が一体となって人材の確保や育成に取り組むといった方法を挙げている。
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