中小企業の収益力、“差”を生むのはイノベーションへの意欲:中小企業白書(3/4 ページ)
グローバル化の進展や長引く経済不況により、収益力の強化が求められている中小企業。政府が発表した2015年版「中小企業白書」では、中小企業を取り巻く環境の変化や、収益力の強化に向けて取り組むべき複数のポイントに関するの分析結果が公表された。本稿ではその概要を紹介する。
新規市場の開拓に向けた課題
収益向上に向けた1つ方法として販路の拡大がある。白書では、今後は“よいものをつくる”から“売れるものをつくる”という市場のニーズを取り入れた発想の転換や、デザインなどを活用したブランド構築、インターネットの活用が新たな販路開拓の可能性につながるという提案がなされている。
こうした中小企業の販路開拓に向けた取り組み状況の調査では、特に製造業と卸売業が新規市場での販路開拓に向けた取り組みを行っている企業の割合が多いという結果となった。その一方で、約2〜4割の中小企業が販路開拓に向けた取り組みを行っていないことを指摘している。
しかし売上目標の達成という観点から見た場合、新規市場は既存市場より達成率は低くなっており、中小企業の新規市場開拓の難しさが反映された結果となった。また新規/既存市場ともに市場のニーズや規模を把握していると回答した企業は、把握していないと回答した企業に比べて目標の達成度合いが高くなっており、市場調査の重要性が表れたといえるだろう。
では新規市場を開拓する際にはどういった課題が発生しているのだろうか。新規市場で売上目標を達成できなかった企業が抱える課題として最も多く挙げられたのは「人材」に関するものとなった。具体的には「新規顧客の発掘などができる営業人材の不足」や「企画やアイデアを出して形にしていく人材がいない」といった課題を、半数以上の中小企業が挙げている。
人材の次に多い課題は、情報収集や分析といったマーケティングに関するものだ。この中で最も回答数が多かったのは「自社の強みを生かせる市場が探せない」という課題で、次点には「情報収集や分析を行う人材がいない」がランクインしている。あらゆる場面において人材不足が大きな問題となっていることがうかがえる。
さらにこうした人材不足を課題として挙げる企業のうち、半数以上の企業が外部から人材を獲得する意向があるものの、成功に至っていない状況だという。その理由として最も多く挙げられたのが「コストに見合う効果が期待できない」というもので、続いて「必要な資金が無い」「獲得方法が分からない」がランクインしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.