“血まみれ”で夢を描くシャープ、止血策は十分か?:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
シャープは2015年3月期(2014年度)の決算で2230億円という巨額の最終赤字に転落。2017年度(2018年3月期)までの経営再建策を発表した。本社の売却や3500人の人員削減により固定費削減を推進するが、具体的な事業再建策は不明確なものとなった。
具体性に乏しい経営再建策
中期計画では2015年度を構造改革の1年とし2016年度に最終黒字化、2017年度には営業利益率4.0%を目指すとしている。
ただ、中期計画として示された内容は、経営再建策としてはやや具体性に欠ける内容だ。実効性があり具体的な施策として挙げられたのは、「本社の土地・建物の売却」「3500人規模の人員削減」「カンパニー制度の導入」の3点のみ。カンパニー制の導入について、高橋氏は「ガバナンスの問題で状況に応じた対応が取れなかった反省を生かし、5つのカンパニー制を導入し各カンパニーに明確な経営責任を持たせることで、経営判断のスピードアップを実現する」と語る。
家電製品やテレビを扱うコンシューマーエレクトロニクスカンパニーについては、日本とアジアを重点地域とし、欧米などでの展開を絞り込む方針。さらにテレビや通信、家電などを組み合わせた「今までにない製品を作り出していく」(高橋氏)。太陽光発電システムなどのエネルギーソリューションカンパニーについては、ソーラーだけでなく蓄電池やHEMSなどと組み合わせたソリューション提案の強化を推進。海外比率も高め、2017年度には海外事業の売上高比率が3割、ソリューション事業の売上高比率が5割を占めるように伸ばしていく。
事務機やデジタルサイネージを扱うビジネスソリューションカンパニーでは、事務機においてITサービスと組み合わせた展開を強化し、新規販路を拡大。2015年度の新規販路による売上高200億円を2017年度には約600億円へと引き上げるという。部品などの電子デバイスカンパニーでは、スマホ用カメラや高付加価値部品の拡大により売上高と利益を伸ばす方針。スマホ用カメラでは2017年度までに2014年度比約3倍に成長させるという。
今回、在庫評価減を行った液晶ディスプレイを扱うディスプレイデバイスカンパニーについては、BtoBtoB分野のウェイトを拡大し、キャッシュフローを重視した運営を進めていく。
止血策は本当に十分なのか
構造改革施策の目標として2015年度の収益改善効果として年間285億円を掲げているが、事業面での具体的な抜本的構造改革案はほとんど出ていない。拠点の統廃合などについても「現状では決まっていることはない」(高橋氏)としている。また、カンパニー制採用による分社化で外部資本の活用を行う可能性もあるが「基本的には100%シャープ資本の社内カンパニーの領域でしか考えていない」(同氏)としている。また「不採算事業からの完全撤退」などは掲げているものの、「現在赤字であるというだけでなく将来性などを考えてみて決めなければならない」(同氏)などとしており、記者会見では終始歯切れの悪い回答となった。
シャープが、新しい中期経営計画を定めたのは2015年4月末のことで、現在はまだほとんど社内の精査が終わっていない状況だ。今後10月のカンパニー制移行を前に、まず6月1日から「事業統括制」へと移行する。実際に各カンパニーにおける事業を精査し、具体的な“止血策”が生まれてくるのはそれ以降のことになると見られている。
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