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3Dデジタル技術を活用した表面加飾のメリット「INTERMOLD 2015」特別セミナーリポート(2/2 ページ)

「INTERMOLD 2015(第26回 金型加工技術展)」の特別セミナーに、ケイズデザインラボ 代表取締役 社長の原雄司氏が登壇。同社の「D3テクスチャー」の取り組みをベースに、3Dデジタル技術を活用した表面加飾のメリットや、従来工法との違いなどについて紹介した。

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通常のCADデータ以外の3Dデータを活用する

 そんなD3テクスチャーを支えているのがFreeformだ。Freeformはペン型のマウスデバイスで3Dデータをペン先で触るようにしながらモデリングを行っていく「アナログとデジタルを融合したようなツールだ」(原氏)。モデリングといっても3D CADやCGツールによる3Dデータ作成とは異なり、Freeformでは「ボクセル」と呼ばれる“粒”で3Dデータを表現している(「ボクセルモデリング」という)。


Freeformボクセル 画像9(左) 「Freeform」によるモデリング作業/画像10(右) ボクセルについて(出典:ケイズデザインラボ) ※画像クリックで拡大表示

 3D CADやCGの世界では、「ワイヤーフレーム」「サーフェス」「ソリッド」「ポリゴン」などの3次元構造がメジャーだが、ボクセルはここ数年のマシンスペック向上(OSの64bit化)とともに注目を集めている3Dモデルデータの表現形式だ。ボクセルモデリングであれば、これまでの3D CADやCGツールでは実現が難しかった有機的な形状を容易に再現できるので、プロダクトデザインやデジタルテクスチャーの作成に適しているといわれている。Freeformは、このボクセルデータとCADデータを混在して扱うことが可能であるため、D3テクスチャーの推奨ツールとして活用されている。

 「ボクセルの粒1つ1つに材料特性などの情報を付加することができる。現在策定が進んでいる次世代3Dプリンタフォーマット『AMF』では形状に色や材料情報を付加することが決まっており、ボクセルの注目度は高まっている。また、ボクセルはすき間があっても立体を構成しようとするのでエラーの少ないSTLデータの変換が可能で、かつどんな形状でもオフセットで失敗しないという特性がある。細かな粒で立体を表現するためデータ量は大きくなってしまうが、最近のマシンスペックであれば十分に扱えるようになってきた」(原氏)。

 D3テクスチャーでは、通常のCADデータ以外の3Dデータを、特に表面加飾で活用している。ここでいう通常のCADデータ以外の3DデータとはFreeformで扱えるボクセルとSTLだ。読者の中には「精度の低いSTLなんて表面加飾で活用できるわけがない!」と思われるかもしれない。こうした声に対し、原氏は「STLは精度が低いのではなく、解像度の問題だ。STL(ポリゴン)を構成する三角メッシュを細かくしていけば、非常に滑らかな表面を再現できる」と説明。

大容量STL
画像11 大容量STLであればCADデータのように滑らかな表面を再現できる(出典:ケイズデザインラボ)

 さらに、STLとCAMとの相性について「実は、多くのCAMは曲面をポリゴン化してから、それをオフセット(逆オフセット法など)計算して工具経路を生成している。一生懸命3D CADでモデリングしてもほとんどのCAMがポリゴン化しているのだ」(原氏)という。また、断面計算の処理についてもCADデータそのものよりも、ポリゴンの方が適しているため、こういった面からも「STLはシンプルで、高解像度にすれば滑らかな形状も再現できる扱いやすいフォーマットだ。STLは精度が低いというのは誤りだ」と原氏は語る。

高精細スキャンや自動増殖プログラムでテクスチャーを開発

 D3テクスチャーで利用するテクスチャーの開発には、2つのアプローチがある。1つは本物のサンプル素材を3Dスキャンしたデータを利用するやり方。もう1つは画像をもとにモデリングを行い、独自の自動増殖プログラムで作り出すやり方だ。

 サンプル素材を3Dスキャンして利用する例として、原氏はニット柄の「iPhone」ケースの例を紹介。「本物のニットの編み込み模様を3Dスキャナでスキャンして、そのデータをFreeformに取り込み、あらかじめ作成しておいたiPhoneケースの3D CADデータに張り付ける。これはレンダリング画像だが、本物に近いテクスチャーを製品表面に加工できてしまう」(原氏)。

本物のニットiPhoneケース 画像12(左) 本物のニットの編み込み模様を3Dスキャナ/画像13(左) iPhoneケースの3D CADデータに張り付け(出典:ケイズデザインラボ) ※画像クリックで拡大表示

 従来の3Dスキャナではスキャン時間がかかったり、思うような精度が出なかったりした分、他の工法を開発して組み合わせるなどして対応していたが、「高精細16Mカメラを2機搭載するAICON 3Dsystems社製の『stereoSCAN 3D』であれば、本物の革素材から一瞬で革シボのテクスチャーを取り込めるようにまでなった。この機材が登場したことでD3テクスチャーのプロセスもよい意味で見直す必要が出てきた」(原氏)という。

AICON 3Dsystems社製3Dスキャナ「stereoSCAN 3D」
画像14 AICON 3Dsystems社製3Dスキャナ「stereoSCAN 3D」(出典:ケイズデザインラボ)

 もう1つの、画像を基にモデリングを行い、独自の自動増殖プログラムで作り出すやり方だが、サンプルとなる小さな画像が1つあれば、同社が独自開発した自動増殖プログラムで自然な仕上がりのパターン画像が作成できるという。後は、この画像をベースにFreeformでボクセルモデリングするだけでよい。3Dデータが完成したら後はレンダリングして画面で確認することもできるし、3Dプリントして触感を確認することもでき、問題がなければそのまま金型加工にかけることもできる。

自動増殖プログラム
画像15 サンプル画像をもとにモデリングを行い、独自の自動増殖プログラムでテクスチャーを作り出す方法(出典:ケイズデザインラボ)


 今後同社は、D3テクスチャー事業の課題としてテクスチャーのライブラリ拡充とシステム化や機能性のあるテクスチャーの開発、他の工法との融合などを挙げ、D3テクスチャーのさらなる発展に向けて注力していくという。また、原氏はGoogleが計画しているモジュール式スマートフォン「Project Ara」への取り組みにも力を入れ、世界規模で既存のシステムを組み替える可能性のある同取り組みの認知と普及に努めるとともに、日本のデザイン力、表面加飾技術を世界に発信していきたい考えだ。

Project Ara
画像16 ケイズデザインラボは「Project Ara」への取り組みにも注力(出典:ケイズデザインラボ)

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