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企業だけではなく個人も3Dプリンタ体験ができる3次元プリンタショールーム「CUBE」とは

FabCafeの入居するビルの2階にオープンした「CUBE」は、3次元プリンタのショールームだ。企業と個人両方に開放し、FabCafeと連携するモノづくりワークショップも開催する。個人では手の届かない高価なツールを体験できるチャンスだ。

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 ITベンダーのイグアス(iGUAZU)は2012年10月17日、3次元プリンタのショールーム「CUBE」を東京都渋谷区にオープンした。同ショールームは、ロフトワークが2012年3月に開設したロフトワークが運営するデジタルモノづくりCafe「FabCafe」と同じビルに入居している。FabCafeは1階で、CUBEは2階だ。平日の9〜18時は企業向けの利用時間とし、平日18時以降および土日は個人向けに開放する。


イグアス 代表取締役社長 矢花達也氏

 「3次元プリンタの活用は、試作だけではなく、最終製品作りにも移行してきており、今後もさまざまな分野に広がっていくと見ている。3次元プリンタの世界市場規模は、(過去23年間の年平均)成長率が26.2%(Wohlers Reportのグローバル調査による)と、大変伸びているが、日本市場だけみると『モノづくり大国』をうたっているにしては意外と伸びていない。今後はもっと日本で普及させ、日本のモノづくりの可能性を広げたい。3次元プリンタのことを、もっと多くのいろいろな方に知ってもらいたい」(イグアス 代表取締役社長 矢花達也氏)。

 同ショールームは、3次元プリンタ関連の設備を体験できる場として解放するほか、同じフロアに入居するケイズデザインラボや1階のFabCafeの協力の下、3次元プリントやスキャンなどを用いた個人向けのモノづくりワークショップやセミナーも同年11月3日から開催する。個人では手の届かない高価な企業向けツールも体験できる。


CUBEの室内

 ケイズデザインラボは、3次元デジタルツール活用やデザイン関連の新事業に関するコンサルティング、機材やソフトウェア販売などを行う企業だ。イグアスとは協業関係にある。

 「イグアスから『何か、新しい取り組みができないか』と前々から相談されていた。そんな折に、FabCafeと出会った。個人的にも興味があってよく遊びに来ていた。(自社が)クリエイティブな部分(デザイン)の強化が課題だったこともあって、(ロフトワークが強みとする)デザインのビジネスの部分で組んでいただけないかとこちらからロフトワークにアプローチしたのがきっかけだった。その後、FabCafeの2階が空くことをロフトワークから聞いてすぐに恵比寿にあった本社オフィスを今のビルに移転した。それを機会に、『こちらで一緒に新しい取り組みをしないか』とイグアスに提案させていただいた」(ケイズデザインラボ 代表取締役社長 原雄司氏)。


ケイズデザインラボ 代表取締役社長 原雄司氏

「今やキックスターターのようなクラウドファンディングを活用したモノづくりプロジェクトが海外では活発。メーカーではなく、ガレージに個人が集まって、製品を作っている。まさにクリス・アンダーソン氏が書籍『MAKERS』で語ったような、革命的なことが起こっている。工場で作らなければいけなかった部品が、3次元プリンタの登場により“取りあえず動く”物が作れるようになった。特に30代以下の若者の間でモノづくり関連のワークショップが注目されており、3次元プリンタにも注目が集まっている」(ロフトワーク 代表取締役社長/FabCafe共同創業者 諏訪光洋氏)。同氏は、この若い「MAKERS」世代が、製造業の復活を後押しするだろうと考えているという。またFabCafeは海外展開も計画しており、2013年春には台湾の台北店のオープンを予定している。他にオランダやデンマークからも声が掛かっているということだ。


ロフトワーク 代表取締役社長/FabCafe共同創業者 諏訪光洋氏

FabCafeもレーザーカッターなどの簡易なモノづくり設備を備える

 CUBE内に常備する装置は以下の通り。

  • 人物用3次元スキャナー「bodySCAN 3D」(breuckmann製)
  • 工業製品向け3次元スキャナー「smartSCAN 3D-HE」(breukmann製)
  • ミッドレンジ3次元CAD「SolidWorks」(SolidWorks製)
  • クレイモデラー「freeform」(geomagic製)
  • 3次元プリンタ「Projet3500」および「Projet1500」(3D Systems製)

 bodySCAN 3Dは、4本の柱に囲まれた1.2m四方(高さ2m)のエリアに立った人の全身を数秒ほどで3次元スキャンでき、フルカラーで3次元データが生成できる。測定精度は、±0.15mm。

 4本の柱はセンサーポールと呼ばれる物で、そこから「フリンジパターン」という縞模様の光をスキャン対象に照射する。それを8台のカメラでキャプチャーし、専用のソフトウェア上で8ショットのデータの位置合わせを自動的に行い、3次元モデルデータを生成する。カメラはカラーで撮影しているため、そのデータをマッピングすることで、3次元モデルデータに貼り付けるテクスチャまで生成する。大容量の点群データ処理については、マルチコア対応のワークステーションに並列計算させることで、短時間で3次元演算が可能だという。


モデルの女性をスキャンしたデータ

 上図は、実際にモデルの女性をbodySCAN3Dでスキャンしたままのデータだ。従来の3次元スキャナと同様に、黒色や透過色が苦手なので、クレイモデラーや3次元CADで補正を掛ける必要がある。


モデルになった女性と、造形されたフィギュア

 各装置や3次元データの扱い方など、技術的なことはイグアスやケイズデザインラボに相談することも可能だ。

 CUBEに常備する装置を体験してみたい場合は、事前にイグアスに問い合わせをしてほしい。「FabCafeの帰りに、ふらっと訪れてみたい」という方も、見学のみなら可能ということだ。

 CUBEでは、来店者との交流を通じて、3次元データ関連の新たなサービスの可能性やニーズを探っていき、ひいては日本の産業の活性化を支援したいということだ。

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