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結果が出ないときこそ考えるべきKPIの導入手順中堅製造業のためのグローバルERP入門(8)(3/3 ページ)

中堅製造業に効果的なグローバルERPの活用方法と、失敗しない導入方法を解説する本連載。最終回となる今回は、ERPを導入した後、実際に効果を出すための運営手法であるKPI管理を設定するまでのステップとその際の注意点を紹介します。

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5.施策の状況を測定するKPIの設定

 組織内で合意した施策について、その施策の成果や進捗状況を定量的に測る指標(例:引き合い数や受注率)がその組織の担当者に設定されるKPIとなります。ここで必ずやっていただきたいのは、その施策によって本当にKPI(活動指標)の改善が見込まれるのか、それによって本当にKGI(結果指標)が達成されるのか、という論理的な根拠をしっかりと検証しておくことです。それらの関連性が論理的に説明できない場合は、施策の再検討や施策のターゲットとしている活動の選び直しが必要かもしれません。

 職人気質の専門職が集まる生産部門や、個々人の傑出した営業スキルで成長しているオーナー系企業などでは、特定の有識者による勘と経験で何の論理的根拠もないままKPIが設定されるケースも少なくありません。このアプローチ自体間違っているとは言いませんし、時として有効かもしれませんが、この属人的な要因を会社のノウハウとして昇華・継承していくためにも、「そのKPIがどの様にKGI達成に関連付くのか」というロジックを関係者内で共有しておきましょう。

KPI設定時の注意点

 本稿の最後に、ここまでご紹介してきたステップの中で注意いただきたいポイントを2つほどご紹介します。自社にKPIを導入する際のご参考になればと思います。

1人の担当者が負うKPIは少ないほど効果的

 管理意識が強い経営者のいる会社では、1人の担当者が5つも6つもKPIを負わされているケースに出会います。これではKPIの報告が目的となってしまい、現場が疲弊し、本来の改善活動がおろそかになるという本末転倒な事態に陥ります。大量にKPIを設定しなければKGIの達成に至らないような複雑なビジネスだとしても、議論を行って立てた仮説を基にKPIを1〜2つ程度に絞り込み、KGIへの効果を検証しましょう。こうして1人の担当者に課すKPIをできるだけ限定し、その分1つの改善に全力を費やせる環境を提供することが望ましいと考えます。

KPIと施策は柔軟に見直しましょう。

 施策を打ってもKPIが改善されない場合は、施策の選択を誤っている可能性があります。KPIは改善したのにKGIが達成されない場合は、KPIとKGIが論理的につながっていないことになります。組織ミッションであるKGIや全社目標は簡単に変えられない(変えてはいけない)ものだと思いますが、その下で実行される施策やKPIは組織の中である程度、試行錯誤を繰り返しながら精度を上げていくことが重要です。少なくとも半年〜1年に一度は施策やKPIの妥当性をゼロベースで確認し、必要に応じて微調整する柔軟さが必要です。あくまでも施策やKPIは手段であり、目的はKGIや全社目標の達成にあるのです。

まとめ

  • KPI導入の1つのアプローチとして、全社の目標や組織のミッション、組織内の施策を関連付けて定義し、それぞれを定量的に測る指標としてKGIやKPIを設定するという進め方が一般的です
  • 組織や担当者に課すKPIが多すぎると、施策に割く労力が分散してしまったりKPI管理そのものが負荷になったりすることで業務の足かせになってしまうこともあります
  • 一度定めたKPIや施策に固執することなく、本来の目的である全社目標やKGIの達成に向けて、時には柔軟に見直すことも必要になります

最後に

 当たり前のことですが、経営報告の内容が複雑であればあるほど、適切なタイミングで高精度なデータを提供するには膨大な労力と時間がかかります。統合化された基盤の上で多様なデータを一元管理できるERPは、その実現手段として非常に有益なツールです。グローバルにビジネスを行う製造業のKPI管理には、会計基準の違いや為替レートの問題などが複雑に影響し合います。「各国を同一基準で見なければならない」という当たり前のことに膨大な負荷が発生しますが、グローバル対応しているERPがその一助となることは言うまでもありません。

 本連載ではここまで全8回にわたってこうしたERPの導入プロセスや導入効果などについて解説してきました。ERP導入のご検討の一助となれば幸いです。

筆者プロフィル

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蒲山雅文(かばやま まさふみ) スカイライト コンサルティング シニアマネジャー

大手SIベンダーにてERPコンサルタントを経験し、スカイライトコンサルティングに入社。大手企業から中小企業まで、幅広い企業に対してコンサルティングを実施。基幹・経営管理領域の全社プロジェクトを得意領域とし、戦略策定・構想立案から全社業務改革、システム導入などの推進・定着化といった一連のフェーズでプロジェクトに従事する。




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