結果が出ないときこそ考えるべきKPIの導入手順:中堅製造業のためのグローバルERP入門(8)(2/3 ページ)
中堅製造業に効果的なグローバルERPの活用方法と、失敗しない導入方法を解説する本連載。最終回となる今回は、ERPを導入した後、実際に効果を出すための運営手法であるKPI管理を設定するまでのステップとその際の注意点を紹介します。
1.全社の目標の明確化
全社的な目標は、一般的に事業計画などに明記されています。場合によっては定性的なものが設定されることもあります。しかしKPI導入の取り組みでは、定量的な全社目標を起点として、各組織の目標や施策を決めていきます。そのため、定性的な目標が全社目標になっている場合は、まず経営層・経営企画部門でその目標が達成されたことをどうやって定量的に評価するのかという論点から討議を行い、定量的な目標に置き換えた上で関係者と共有しましょう。
2.各組織のミッションの整理
次に全社目標の達成を目指す自社のバリューチェーンと、各組織の関係を確認することで、それぞれの組織がどんな役割を担っているかを明確にしていきます。まずは自社のバリューチェーンを大まかなステップに分解します(例:企画→開発/設計→調達→製造→在庫→販売など)。この各ステップには、例えば「販売」であれば営業部門というように、主管部門となる組織を関連付けることができるはずです。1つのステップに複数の部門が関連付く場合は、責任分界点を明確化するためにステップを分けた方がいいかもしれません。このバリューチェーンと各組織の関連付けの整理結果を踏まえて、それぞれの組織に課すミッションを経営層と検討しましょう。
例えば「販売」を担う営業部門では「多くの顧客に多くの製品を売る」ことが、「調達」を担う購買部門では「生産部門の要望に応じて適切に原材料を供給する」ことがそれぞれの組織のミッションになります。ビジネスの特性や組織設計のコンセプトによって、同じ組織名でも企業によって課せられるミッションは変わってきます。全社の目標に対して各組織がどのように貢献するのか、その関連性を明確に定義しておくことが重要です。
3.組織のミッションの達成度を評価する指標の設定
各組織のミッションが明確になったら、その達成度を定量的に評価する指標を組織の責任者や経営企画部門で議論しながら決めていきましょう。この結果指標は「KGI(Key Goal Indicators)」と呼ばれます。先述した営業部門の例の場合、KGIとなるのは「売上高」です。購買部門では「適切な供給」が何を指すかの解釈によりますが、一般的には「調達リードタイム」もしくは「購買単価」といった指標がKGIに設定されます。
ちなみにこうした「売上高」のようなKGIとすべき指標を、KPIとして設定している事例をよく見かけます。KGIは「結果指標」ですが、KPIはKGIで設定した目標の達成に向けて実行する具体的な施策の状況を測定する「活動指標」だということを認識しておきましょう。例えば「売上高を上げる」という目標をKPIとして設定しても、これでは具体的に手を付けるべきポイントが発散してしまいます。この場合、「売上高」は、あくまで一連の販売プロセスの「結果指標(KGI)」であって、何らかの手を打って直接的に改善を図る類のものではないという点に注意が必要です。
4.具体的な施策の検討
これまでの取り組みにより、各組織のミッションとそれを評価する指標(KGI)が決まりました。ここからはKGIの目標達成に向けた具体的な施策の検討に入ります。施策を検討する際には、組織内で行われる一連の活動の中でどこに手を付けるのかを絞り込む必要があります。まずは組織内の業務プロセスを「活動」の単位まで分解することから始めましょう。
例えば「販売プロセス」は、「引き合い獲得→商談→受注→出荷」といった活動に分解されます。このうち、ビジネスの特性や過去の実績を振り返り、KGIの目標達成に最も重要と思われる活動を絞り込み、その活動を改善するための施策を検討していきます。販売プロセスに施策を打つと一口にいっても、引き合いを増やすための施策と受注率を改善する施策では、営業担当者の行動が全く異なります。組織の責任者のみならず、組織内の業務や自社のビジネスに精通した有識者を積極的に巻き込み、効果的な施策を洗い出すことで最も重要と思われる活動を絞り込んでいきましょう。
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