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カーエアコンの冷房はなぜ冷えるのか(前編)いまさら聞けない 電装部品入門(18)(3/3 ページ)

夏場のドライブで大活躍するカーエアコンの冷房機能。一体どういう仕組みで冷やすことができるのか前後編に分けて紹介する。前編で説明するのは、冷房機能に必要不可欠な冷媒と、冷媒を使って冷やすための冷凍サイクルの全体像についてだ。

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冷媒が循環する冷凍サイクル

 それではここからは、冷凍サイクルの仕組みについて、順を追って説明していきます。

 構成部品に関しては、車両が生産された時代やメーカーによって若干異なっていたり、名称が異なっていたりすることもありますが、基本的な仕組みや考え方は同じです。その点はあらかじめご了承ください。

 下に示したイラストは冷媒が循環する冷凍サイクルの構成図です。

冷凍サイクルの構成図
冷凍サイクルの構成図(クリックで拡大)

 1つ1つの構成部品については、次回の後編で説明するとして、まずは全体像をつかんでいただくため、簡単に一連の流れをご説明しておきます。

 “循環”している以上、スタート地点というのは特に決まっていませんが、冷媒を循環させるための圧力を作り出しているコンプレッサー(圧縮機)から説明を始めましょう。

 コンプレッサーは、完全に気化した低温低圧のガス状冷媒をスムーズに液化するための下準備に必要な構成部品です。ガス状冷媒を圧縮して意図的に高温高圧の状態にしコンデンサー(凝縮器)へ送り出します。

 走行時に車両前方から流れ込む風(走行風)と、クーリングファンによる冷却風を強制的に受けるコンデンサーは、高温高圧になったガス状冷媒から強制的に熱を奪い去り、液状冷媒へと変化させる働きをします。

 次の次の工程であるエキスパンションバルブ(膨張弁)には、不純物のない液状冷媒のみを供給しなければなりません。そこで、レシーバタンク&ドライヤー(分離/乾燥器)に、ガス状冷媒と液状冷媒が混在したままいったん蓄え、双方を分離するとともに、液状冷媒中のゴミや水分も除去します。

 そしてきれいになった低温高圧状態の液状冷媒を、エキスパンションバルブの小さな孔から強制的に噴霧することで、急激に膨張させて低温低圧の霧状冷媒にします。霧状冷媒はエバポレーター(蒸発器)で気化し、この際に周辺から大量の気化熱を奪います。

 イメージとしては、エバポレーターが通気性の良い氷の塊になると思ってください。最近では、氷に扇風機の風を当てたり、ミスト上の水を扇風機の風に乗せたりして、夏場の簡易的な冷房を再現している場面をよく目にしますよね。

 エバポレーターには、ブロアファンによって車室内の空気が送り込まれており、その空気が持つ熱は冷媒が気化する際の気化熱として奪われます。気化熱を奪われて、結果的に冷風となった空気が順次室内に供給されるので、車室内の気温が下がっていくわけです。

 完全に気化した低温低圧の冷媒は再びコンプレッサーに吸引された後、また同じ工程を繰り返すことで、冷房機能が継続的に働くことになります。



 次回は、カーエアコンの冷房機能の後編として、今回紹介した冷凍サイクルを構成する主な構成部品と、その役割について解説します。お楽しみに!

筆者プロフィール

カーライフプロデューサー テル

1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。



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