代替フロンの代替冷媒に対応するカーエアコン用ホース:材料技術
横浜ゴムは、カーエアコンの次世代冷媒として欧州で普及が進んでいる「HFO-1234yf」に対応するカーエアコン用ホース「AC6B 11」を開発した。
横浜ゴムは2015年4月30日、カーエアコンの次世代冷媒として欧州で普及が進んでいる「HFO-1234yf」に対応するカーエアコン用ホース「AC6B 11」を開発したと発表した。既に、カーエアコンのサプライヤにAC6B 11の納入を始めている。欧州市場向けの車両を中心に、AC6B 11を採用したカーエアコンが搭載されているという。
かつて、カーエアコンの冷媒には、オゾン層の破壊作用が大きいフロンガスが用いられていた。このフロンガスを代替する冷媒である「代替フロン」として広く用いられてきたのが「HFC-134a」だ。HFC-134aは、フロンガスに比べると、オゾン層の破壊作用は小さい。
しかしHFC-134aは、地球温暖化への影響度合い(GWP=地球温暖化係数)が1300と極めて高い(CO2は1)。欧州の自動車業界は、GWPが150以上の冷媒の使用規制を段階的に進めており、代替フロンであるHFC-134aを代替する冷媒として、GWPが4と小さいHFO-1234yfの採用を始めている。
内部コーティングのポリアミド樹脂に受酸剤を配合
コンデンサーやエバポレーターといったカーエアコンの構成部品の間をつなげるカーエアコン用ホースは、冷媒を循環させるのに必須の部品だ。
カーエアコン用ホースの構造は、外側から外面ゴム、補強糸、内面ゴムとなっており、内面ゴムの内側は冷媒の漏れを防ぐためのポリアミド樹脂によってコーティングされている。
しかしHFO-1234yfは、長期使用によって徐々に分解し、酸を発生するという性質を有している。従来のカーエアコン用ホースの内部コーティングに用いられているポリアミド樹脂は、この酸によって腐食し、冷媒が漏れ出すという課題があった。
今回開発したAC6B 11では、受酸剤を配合して酸を取り込めるポリアミド樹脂を内部コーティングに用いることで、従来の課題であった樹脂の腐食と冷媒の漏れを防ぐことに成功した。この酸を取り込めるポリアミド樹脂については、既に特許取得済みである。
今後は、欧州だけでなく、米国の自動車業界でもHFO1234yfの採用が進むとみられている。横浜ゴムは、欧米のカーエアコンサプライヤと自動車メーカーに向けて、HFO-1234yfに対応するAC6B 11の販売活動を強化していく方針だ。
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