デンソーが運転席だけ空調できるカーエアコンを開発、新型レクサスGSに搭載:カーエアコンもエリア制御の時代に
家庭用のエアコンでは、空調する場所を選べるエリア制御の機能が広く採用されている。カーエアコンにも、エリア制御が可能な製品がついに登場した。
デンソーは2012年4月24日、車室内部を運転席、助手席、後部座席の3つに分けて空調することができるカーエアコンを開発したと発表した。乗員がドライバーだけの場合に、運転席だけを空調できる「世界初」(デンソー)の機能を備えている。このカーエアコンを使って運転席だけを空調する場合、従来のカーエアコンで車室全体を空調する場合と比べて使用エネルギーを約20%削減できるという。2012年1月に発売された「レクサスGS」の「GS450h“version L”」、「GS350“version L”」、「GS250“version L”」に標準装備されている。
今回発表したカーエアコンは、冷風や温風を生み出すエアコンユニットの内部を5つに分けた新構造を採用している。5つに分かれた内部の構造は、運転席と助手席のフロントガラス手前にあるダッシュボード上の吹き出し口、運転席と助手席の足元吹き出し口、後部座席用の吹き出し口にそれぞれ直結している。これにより、乗員のいない座席への空調をボタン操作で止められるようになり、運転席、助手席、後部座席、それぞれの温度設定を行えるようになった。従来のエアコンユニットは内部が分かれていなかったため、各吹き出し口でのオンオフ制御や、座席ごとに温度調節することはできなかった。
デンソーが開発した新型カーエアコンのエアコンユニットの構造。左の図がエアコンユニットの側面から見た断面である。右の図は、左の図内で「A」で示されている一点破線の線に沿った面から見た断面。エアコンユニット内が5つに分かれていることが分かる。(クリックで拡大) 出典:デンソー
なお、空調モードは、運転席だけ、運転席と助手席、後部座席を含めた車室全体の3つから選択できる。また、さまざまな環境での使用を想定した試験とシミュレーションを繰り返した結果、運転席だけを空調する場合でも、エネルギー消費と温度制御の最適なバランスを実現するために助手席や後部座席を空調することもあるという。
この他、暖房運転時のエネルギー効率を高めるための仕組みも導入した。通常、カーエアコンで暖房運転を行う際には、車室内の換気に加えて、窓の曇りを防ぐため、低湿度の外気を多く使用している。しかし、低湿度の外気を取り入れるために、その分だけ暖かい空気を車室外に排出するので、暖房時のエネルギー効率が低下するという問題があった。これに対して、今回のカーエアコンでは、窓の曇りに対する影響が大きいダッシュボード上の吹き出し口の空調だけ外気を使用することにした。これにより、車室外に排出していた暖かい空気の量を従来比で約50%削減している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- デンソーがインテルと共同開発、次世代車載情報通信システム
車載情報通信システムに求められる内容が変わってきた。もはやカーナビを軸としたシステムでは対応できない可能性がある。デンソーはインテルと共同で、次世代車載情報通信システムの開発に乗り出した。 - 電圧制御回路を簡素化した電池監視ユニット、デンソーが開発
デンソーは2010年1月、従来よりも電圧制御回路を簡素化した、車載リチウムイオン電池用の監視ユニットを開発したと発表した。