FAが好調を持続する三菱電機、売上高、利益ともに過去最高を実現:製造マネジメントニュース
三菱電機の2014年度決算は、FAや自動車機器部品などが好調に推移し、売上高、営業利益、税引前当期純利益ともに過去最高を記録した。
三菱電機は2015年4月28日、2015年3月期(2014年度)の連結決算を発表した。売上高が前年度比7%増の4兆3230億円、営業利益3176億円(同35%増)、税引前当期純利益3229億円(同30%増)といずれの項目も過去最高を記録した。また、経営指標として重視する営業利益率は前年度比1.5ポイント高い7.3%、ROEは同3ポイント伸長の13.9%へとそれぞれ向上した。借入金比率は同0.9ポイント下がり9.4%へと改善されている。為替変動による売上高への影響は約1240億円(うち米ドルが約500億円増、ユーロが約80億円増)となった。
2014年度の連結実績をセグメント別でみると、売上高は全てが増収となり、営業利益は産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器の4部門が増益となった。重電システム部門のうち社会インフラ事業は国内の電力事業・公共事業の減少などにより、受注は前年度を下回ったが海外の交通事業が増加し売り上げは前年度並みで推移。この部門では電力会社により一般家庭への取り付けが進み始めたスマートメーターが大きな伸びを示している。ビル事業は中国・ASEANなどの海外の昇降機新設事業の増加に加え、円安の影響もあり受注・売り上げともに前年度を上回った。その結果部門全体の売上高は1兆2289億円(同4%増)。営業利益は案件の変動などにより724億円で同38億円減少した。
産業メカトロニクスがけん引
産業メカトロニクス部門は売上高1兆2827億円(同17%増)営業利益1459億円(同479億円増)。FAシステム事業はスマートフォン関連や自動車関連の設備投資や国内製造などでの設備更新の増加に加え、円安の影響もあり受注・売り上げともに前年度を上回った。自動車機器事業は北米・中国などの新車販売市場が好調でカーマルチメディア製品などが伸びた他、円安の影響もあり好調に推移した。なおこの部門の売上構成比はFAシステム事業が約45%。自動車機器事業が約55%という。
情報通信システムは通信事業が通信インフラ機器の需要減少などにより、受注・売り上げともに減少。情報システム・サービス事業はシステムインテグレーション事業などの減少により売り上げは下回った。電子システム事業は防衛システム事業、宇宙システム事業の大口案件の減少により受注は下回ったものの、防衛システム事業の既受注案件の進捗により売り上げが伸長した。この結果、部門全体では売上高は5595億円(同2%増)。営業利益189億円(同134億円増)と増収増益となった。
電子デバイス事業はハイブリッド車・電気自動車市場の拡大に伴う自動車用パワー半導体の需要増加や中国を中心とした電鉄用・民生用・産業用パワー半導体、通信用光デバイスなどの需要増加などに加え、円安の影響もあり受注・売り上げともに増加。部門全体では売上高2384億円(同22%増)営業利益301億円(同201億円増)となった。
家庭電器事業は当初前年の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響を約200億円、事業を終息したプロジェクターとディスプレイモニターの約150億円をマイナス要因として挙げていたが、売上高は9448億円と前年度並みで推移した。この部門で最も構成比の高い空調機器が、アジア・北米・欧州向けで好調に推移。国内も業務用空調機器が伸び、円安の影響などが前年実績をキープした要因となっている。営業利益は542億円(同14億円増)。太陽光発電システムは、数量は前年並みとなったものの、価格低下の影響を受けて売上高は1割強減少したもようだ。
その他の関連では資材調達の関係会社を中心に売上高7405億円(同10%増)、営業利益237億円(同39億円)となっている。海外売上高は1兆8106億円(同15%)となり構成比は42%と3ポイント伸びた。最も伸びた地域は北米で為替の影響もあり同20%増を記録した。アジア地域は同18%増、欧州も同6%増となった。
スマートメーターの伸びも期待
2016年3月期(2015年度)は売上高4兆3700億円(同1%増)、営業利益3200億円(同1%増)、税引前当期純利益3200億円(同1%減)を予想する。経営環境としては中国の一段の景気減速や一部新興国の景気停滞長期化、さらに国内での個人消費や設備などの回復の遅れが懸念されるものの、総じて緩やかな景気拡大の継続を見込むという。為替レートは米ドルが110円。ユーロは125円とする。この他、設備投資額は2350億円(同14%増)。研究開発費は2020億円(同3%増)としている。
部門別の売り上げ計画は重電システムが1兆2300億円、産業メカトロニクス1兆3000億円、情報通信システム5600億円、電子デバイス2200億円、家庭電器9700億円。製品では自動車機器事業で採用機種が増えているカーマルチメディアに加えて、主力製品のオルタネータやスタータの伸びにも期待しているという。家庭電器では主力の空調機器が引き続き高い伸びを示しそうだ。さらに社会インフラ事業ではスマートメーターの伸びが見込まれている。部門別の営業利益は産業メカトロニクスで同4%増、家庭電器が同5%増と高い伸びを予想する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 三菱電機 名古屋製作所、FA機器快進撃の舞台裏
好調を持続する三菱電機のFA機器事業。その成長を支える主力事業所「名古屋製作所」では新たな生産棟を5月に本格稼働させる。分工場の生産性向上に向けた投資も加速させ、成長を「もう一段上に」加速させる方針だ。競争環境が厳しくなる中、成長を続ける秘訣は何があるのだろうか。名古屋製作所 所長の山本雅之氏に話を聞いた。 - 好況に沸く工作機械メーカーは盤石か!? 課題は営業力にあり
企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回はリーマンショック前の勢いを取り戻しつつある日系工作機械メーカーの動向と課題について取り上げる。 - アップルVSサムスン訴訟を終わらせた日本の工作機械の力
知財専門家がアップルとサムスン電子のスマートフォンに関する知財訴訟の内容を振り返り「争う根幹に何があったのか」を探る本連載。最終回となる今回は、最終的な訴訟取り下げの遠因となった「新興国への技術移転」の問題と「なぜ米国で訴訟取り下げを行わなかったのか」という点について解説します。 - 躍進続く産業用ロボット市場、2017年まで年平均12%成長――中国がけん引
国際ロボット連盟(IFR)は、全世界のロボット市場の中期予測について発表。それによると2014年のロボット市場は少なくとも15%以上の成長が予測され、2015〜2017年については年平均12%の成長率を維持する見込みだという。 - 製造現場での普及を2倍に、ロボット新戦略が目指すロボットと共に働く未来
日本政府が主催する「ロボット革命実現会議」は、ロボット活用の技術的および規制面でのロードマップを示した「ロボット新戦略」を発表した。本稿では、この新戦略の中で示されている「モノづくり」分野への取り組みにフォーカスし、その内容を紹介する。