100分の1秒のシャッター速度で生きた細胞を観察できる超解像蛍光顕微鏡を開発: 医療機器ニュース
理化学研究所とオリンパスは、世界最高のシャッター速度で、生きた細胞内の微細構造を観察できる超解像蛍光顕微鏡を開発した。最高100分の1秒のシャッター速度(時間分解能)で、生きた細胞内の微細構造を約100nmの空間分解能で観察可能にした。
理化学研究所は2015年4月15日、生命システム研究センターの岡田康志チームリーダーがオリンパスと共同で、世界最高のシャッター速度で、生きた細胞内の微細構造を観察できる超解像蛍光顕微鏡を開発したと発表した。
従来の超解像蛍光顕微鏡は、100nmまたはそれ以下の大きさのものを観察できる空間分解能を持つが、1枚の画像取得に1秒〜数分程度かかるため、生きた細胞の観察は困難とされていた。同研究グループでは、超解像蛍光顕微鏡のシャッター速度を従来の100倍に高速化(時間分解能100分の1秒)することで、細胞を生きたまま観察できる超解像ライブセル・イメージングの実現を目指した。
同研究では、まず超解像蛍光顕微鏡法の1つである構造化照明法に着目。構造化照明法では、試料にしま模様の照明光を照射し、照射した部分の蛍光分子だけが光る状況にすると、近接する蛍光分子も異なる点だと区別できるようになるため、空間分解能が向上する。この原理を再検討した結果、しま模様の開口パターンを持つ円盤を高速回転させることで、高速に共焦点画像を得られるスピニングディスク顕微鏡と類似性があることが明らかになったという。
同研究グループでは、しま模様の間隔を最適化した円盤と高速撮影に適したカメラ、照明光源を既存のスピニングディスク顕微鏡に設置した「スピニングディスク超解像顕微鏡法」を開発。これにより、最高100分の1秒のシャッター速度(時間分解能)で、生きた細胞内の微細構造を約100nmの空間分解能で観察可能にした。
また実験では、従来の蛍光顕微鏡では観察できなかったミトコンドリアの外膜の構造や、外膜の一部が活発に運動する様子を撮影。さらに、リサイクリング・エンドソームがわずか100分の6秒の間に荷物を受け取り、選別して送り出すという様子も観察できた。
同技術により、従来の光学顕微鏡では観察できなかったエイズやインフルエンザなどのウイルスの感染・増殖の様子を直接見ることが可能となり、治療法の開発などが期待されるという。また、すでに活用されているスピニングディスク顕微鏡の改良であるため、他の超解像蛍光顕微鏡に比べて導入が容易だとしている。
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