3DプリンタとCNCフライスの違いって何?:ママさん設計者がやさしく教える「CNCフライス超入門」(1)(3/3 ページ)
ファブレスメーカーのママさん設計者がCNCフライスの特長や魅力、使い方を分かりやすく解説する連載。第1回は3DプリンタとCNCフライスの違いについて説明する。
じゃあ、3Dプリンタとは何が違うの?
CNCフライスと3Dプリンタは、共に3軸をコンピュータ制御することによって造形を行う機械であること。そしてコンピュータに仕事をさせるのは人間の役目であり、どちらの機械も「その“段取り”が大事なんですよー」というお話をしました。となると、「そもそもCNCフライスと3Dプリンタは何が違うのだ?」というお話もせねばなりません。Twitterや2ちゃんねるなどでたまに「削っていくタイプの3Dプリンタを見たよ」といった、両機を混同してしまっている書き込みを見かけるので、ここで分かりやすくまとめてみましょう。
外観
共に本体とPCがセットになります。CNCフライスは板状の材料を、3Dプリンタはリールに巻いた糸状の材料を用います。
加工中
共にテーブルあるいはヘッドを移動しながら、CNCフライスは上から下へ材料を削り落としていき、3Dプリンタは下から上へ材料を積み上げていきます。
加工品の出来栄え
CNCフライスは材料を直接削るため平滑な表面を得やすいのに対し、3Dプリンタでは材料を積み上げていく際のスジが残ります。その程度は品物が小さくなるにつれ顕著です。
3DプリンタとCNCフライス、それぞれのメリット・デメリット
「加工品の出来栄え」比較にある3Dプリンタで作られたマスコットのように、横にくびれがあるとか、胴体に隠れるような小さい足が付いている物をCNCフライスで削りだすのは、はっきり言って簡単ではありません。なので、このマスコットのように曲面を多用した複雑形状品を1回の段取りで作るのなら、3Dプリンタは最適と言えましょう。しかし、主流のFDM方式ではご覧のように等高線も残りますし、何といっても精度や強度、質感の部分では、金型による成形品や一枚板からの加工品には及ばない点が多々あるのです。その点、CNCフライスは常に樹脂や金属の一枚板が相手ですし、目的によって「切る」「掘る」「削る」と、いろんな手を使えます。CNCフライスを使ってカットした金属板を折り曲げて、ステーやケースを作るといったことも出来ますから、ロボット製作などでは一通りの機構部品を自作することが可能です。
また、部品を直接削りだすのではなく、CNCフライスを使って彫り込みをした板へシリコンを流し込んでシリコン型を作り、模型の複製をする……といった使い方も出来る、とっても便利な“お道具”なのです。
ここまでのお話で、CNCフライスの魅力や利点、楽しさが少しは伝わったでしょうか? 次回からは、CNCフライスの使い方とそのための「段取り」について、順を追って説明していきます。
Profile
藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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