自動車の組み立てやメンテナンス作業をMR×XVLによる仮想環境で検証:3次元ツールニュース
キヤノンITソリューションズとラティス・テクノロジーは、仮想空間と現実空間をリアルタイムに融合するMR(Mixed Reality)技術を活用したシステム「MREAL」上で、超軽量3次元ファイルフォーマット「XVL」を表示できるプラグインソフトウェア「XVL Studio Pro MREAL Advanced オプション」を発表した。
キヤノンITソリューションズとラティス・テクノロジーは2015年4月20日、仮想空間と現実空間をリアルタイムに融合するMR(Mixed Reality)技術を活用したシステム「MREAL」上で、超軽量3次元ファイルフォーマット「XVL(eXtensible Virtual world description Language)」を表示できるプラグインソフトウェア「XVL Studio Pro MREAL Advanced オプション」を発表した。
XVL Studio Pro MREAL Advanced オプションの開発はラティス・テクノロジーが担当し、キヤノンITソリューションズがMREALとのセットで自動車業界をターゲットに販売を行う。
XVLとは、ラティス・テクノロジーが開発した3次元データの軽量化を実現するファイルフォーマットである。XVLフォーマットであれば、一般的な3次元CADデータのファイルサイズの100分の1程度にまで軽量化が可能で、設計段階以外での3次元データ活用が可能となる。特に、Gバイトクラスの大容量3次元データを取り扱うような自動車や航空機、建機、建築といった産業で採用が進んでいるという。「例えば、大容量の自動車のフルモデル3次元データをXVLに変換することで、実物大の3次元モデルでデザインレビューを行ったり、工程検証を行ったりできる。さらに軽量化した3次元データをパーツカタログやテクニカルイラストに活用することも可能だ」(ラティス・テクノロジー)。
ありのままを超大容量3次元で可視化する
今回発表されたXVL Studio Pro MREAL Advanced オプションは、ラティス・テクノロジーのXVL対応ハイエンド3次元ビュワー「XVL Studio Pro」のプラグインソフトウェアである。MREALとXVL Studio Pro MREAL Advanced オプションを組み合わせることで、仮想環境の中で実物大の自動車や建造物を表現でき、実際に身体を使って疑似体験しながら課題を発見することができる。
「部品間の取り合いなどはPCの画面でも確認できたが、人の作業が絡む部分の確認はどうしてもしづらかった。ここにMREALの技術が加わることで、従来、実機検証の段階にならないと発見できなかったような課題が、実機(モックアップ)の完成を待たずに発見できるようになる。特に、最近では設計段階からメンテナンス性を考慮する必要があるため、目線や姿勢、工具の取り合いなど、PCの画面では詳細に確認しづらいようなことを、仮想環境の中で実際に身体を動かしながら確認できるメリットは大きい」(ラティス・テクノロジー)。
MR×XVLで高度なデジタルモックアップシステムを実現!
MREALとXVL Studio Pro MREAL Advanced オプションが実現する“高度なデジタルモックアップシステム”の特長は大きく分けて3つある。
1つ目は、実際の組み立て工程順と連動したバーチャル工程検討である。XVLの工程ツリーとMREALによる仮想環境を活用することで、一連の組み立て工程の手順を疑似体験しながら確認できる。「使用予定の工具がきちんと入るか、その時の作業員の姿勢は辛くないかといった確認はPCの画面上ではしづらい。実際に身体を使いながら確認できる点は大きなメリットといえる」(ラティス・テクノロジー)。
そして2つ目は、部品組み付け時の動的な干渉を仮想空間で確認できることである。MREALの機能の1つである「ターゲットマーカー」により、工具や道具なども仮想化して“バーチャル工具・道具”として仮想環境の中で取り扱える。そのため、実際にバーチャル工具・道具を手に持った状態で、作業動作を行いながら干渉チェックなどが行える。
3つ目は、3次元モデルに検証結果を直接記録できることだ。仮想環境での検証結果をスナップショットできる機能がある。記録したスナップショットは3次元モデルで保存されるので後から角度を変えて見ることもできるという。
記者説明会で披露されたデモンストレーション環境では、自動車のフルモデルの3次元CADデータ(約30Gバイト)を、XVLに変換して約200Mバイトまで軽量化。これをMREALに取り込み、仮想環境の中で実物大の車両として再現して、車両の組み立て手順や工具を用いたメンテナンス性の確認などを実際に体験することができた。
製品グレードは2つ用意されている。1つはフル機能が使える「MREAL Advanced」。もう1つはフル機能から仮想工具とマーカーの連動した動き(ターゲットマーカー対応)、工程ツリー連動表示、MRモード中のスナップショット登録を省いて参照に特化した「MREAL Basic」である。
MREAL Advancedの販売価格(MREALの費用は含まず)は、XVL Studio Pro本体とXVL Studio Pro MREAL Advanced オプションの組み合わせ構成でライセンス料(税別)が350万円、年間保守費(税別)が70万円となり、キヤノンITソリューションズが販売を行う。なお、MREALの基本システムは1000万円からとなり、使用するセンサーやソフトウェアの種類により価格が異なるという。
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