削る! プロダクトデザイナーの「ワクワクモノづくり」:zenmono通信(3/3 ページ)
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、ファクタスデザインの鉢呂文秀さんにお話を伺った。
ハチロさんとの出会い
enmono宇都宮氏 最初鉢呂さんとお会いしたのはトークイベントの「Real MAKERS」の懇親会でした。いろいろお付き合いするまでは「何屋さんなのかな」と。こちらが勝手に抱いているデザイナーのイメージとは違ってたので。
鉢呂氏 なかなかウチは微妙なポジションで。さっきの産業機器だったり民生品みたいなものをデザインをするまでがデザイナーの仕事で、後はお客さんと作り方をどうしましょうって話をすると思うんですけど、今はなかなか大きいメーカーでも新製品を起こさないようになりましたから。そうするとデザイナーもどんどん減っていく。特に外部ウチみたいなアウトソーシングのデザイン事務所とかデザイナーの人っていうのは、恐らく大変なんじゃないかなと思うんですよ。
enmono宇都宮氏 他の皆さんどうされてるんでしょう
鉢呂氏 例えば学校の講師をやってる人もいれば、おつきあいしてるメーカーの専属という場合も多いんじゃないかなと思います。
enmono宇都宮氏 専属だとそのメーカーと一蓮托生になっちゃう不安もありそうですね。
鉢呂氏 僕も前はホントに忙しい時があって、その時は2社独占みたいな感じで、ずっとそこを毎日のように訪れて仕事取ってたんですけど、突然そこが名古屋に移転しますっていう話があったりとか、そうするとぱったり仕事なくなっちゃいますから。
鉢呂氏 後は頑張ってる人だとその都度その都度コンペに出して名前を売ってる人もいるでしょうし、逆にウチみたいに独自のブランドを建ててメーカーとしてやっていってるデザイナーの人も何人かいらっしゃいます。
デザイナーも経営を
enmono宇都宮氏 自社ブランドってなかなか難しいじゃないですか。浸透していくまでのPR活動とか営業活動とかってそういうのはどのように?
鉢呂氏 ウチは基本的には直売メインでいるので、Webサイトとかネットショップとか。最初のころは競合他社がなかったので、何カ月もお客さんに待ってもらう状況がずっと続いていましたが、その後、類似品も出てきて……。そうするとウチのが段々売れなくなるので、何か違うものを作らないと……、といろいろ作りだしてるのが現状ですね。
鉢呂氏 基本的に同じターゲット層に向けていろいろな商品を、という発想なんですけどね。ホントはこの手のヤツは月に1個新作を出そうと思ってたんですけど、なかなか出せなくて。
enmono宇都宮氏 月イチって結構大変じゃないですか? だって企画してデザインして製造してって一連のプロセスを毎月回すってことでしょう?
鉢呂氏 月イチで必ず新製品を出してる会社があるんです。もともとは規模の小さなところだったんですが、今では大きな会社になって、そこを見習いたいなと。デザイナーとして何か1つ作ってバーンと名前を売ろうという人もいらっしゃるんですけど、それだとほんの一時ですよね。浸透しないですから。やっぱ次から次へと出さないと無理ですよね。
enmono宇都宮氏 自社だけではできないものに対して、関係工場さんなどネットワークを広げることは?
鉢呂氏 協力工場もいくつかもちろんあって、例えばアルマイトという表面処理(陽極酸化皮膜処理)は今のところ自社ではできないのでお願いしたり、後はネジなどの細かい部品は自社では作っていないのでそれをお願いしたり。ウチでできないものを他のところにお願いする形ですね。
日本のモノづくりの可能性、未来
enmono宇都宮氏 そろそろ時間も押してきましたので最後に。今までゲストの皆さんに聞いてきてるんですけども、「日本の物作りの未来について」どのようにお考えになっているか伺いたいと思います。
鉢呂氏 製造技術ももちろん必要なんですけども、僕は基本的にデザイナーだと思ってるので、商品力を高めるのはまずデザインなのかなと思っています。デザインと製造方法をうまーくまとめあげたものが最終的にはいいものになるんじゃないのかと思います。
enmono宇都宮氏 そうするとデザイナーさんが技術を身に付けるっていうことだけでなく、知識も必要ですよね。
鉢呂氏 そこは勉強しないとダメですけど、今はもうインターネットで何でも買えますから。チタンでもなんでも買えるので、そういうのを使ってやるのと……後はやっぱり聞くだけと自分でやるのは全然違うので……。
enmono宇都宮氏 興味あるデザイナーさんに一度ここへ来てもらって手伝ってもらうといいじゃないですか。
鉢呂氏 そうですよね。ホントそう思います。
enmono宇都宮氏 デザイナーの方、加工に興味のある方はぜひファクタスデザインさんへお越しいただければと思います。ということで今日はありがとうございました。
鉢呂氏 ありがとうございました。
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