効果的な原価低減推進の考え方【後編】:実践! IE;磐石モノづくりの革新的原価低減手法(6)(5/5 ページ)
革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について解説する「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」ですが、3回にわたり「効果的な原価低減推進の考え方」についてお伝えしています。後編となる今回は「動作改善の3原則」について解説します。
“動作のムダ”の排除は「動作改善の3原則」と同義
ムダな動作を排除して、動作時間のバラツキを小さくしてから動作改善をはじめとした作業改善や工程改善に取り組むことは、改善を進める上での基本ステップです。動作のムダやムリな動作を排除することで、時間や動作距離などのムラをなくしていきます。
作業の開始から完了するまでの動作を細かく分析していくことが動作分析(Motion study)です。これらの分析結果を活用して動作改善をベースとした作業改善を実施していきます。作業は、少数の基本的な動作要素によって組み合わさったものだからです。
特に、時間を分析する場合は、最少の要素動作の時間でなければ、恒久的なものとして正確に取り扱うには問題が残ります。さらに、作業を効率的に管理するためには、「動作改善3原則」に示す“疲労”の発生する要因や頻度などを考えなければなりません。これらの要素を除外して動作の合理化を考えても無駄であるといわれています。
疲労研究の結果から、“楽に、安く、速く”作業を行うためには、非生産的な疲労を除去することは必須です。単に動作を短縮するのではなく、人というものを真に理解し、考慮する方向で検討を加えて作業管理を進めていかなければなりません。単調作業に対して、知性を持たない繰り返し動作は人間性を無視したものであり、単純な動作に対しては批判を加え、職務の充実化を推進することが大切です。
ギルブレス(F.B. Gilbreth)によって提唱され、その後多くの研究者や実務家によって整備され、法則化された「動作経済の原則(the Principles of motion economy)」は、まさしく疲労の少ない動作についての提唱であり、ムリ、ムダ、ムラのない作業動作を実現するための提案です。一言でいえば、動作の分析は、動作の最小単位でとらえて、改善しようとするものです。例えば、身体的部位の活用に関する原則としては、以下の項目が挙げられています。
- 不必要な動作を削除する
- 動作は、最適最低次の身体部位を活用する
- 動作は最短距離で実施する
- 動作の数を減らし、動作の結合を図る
- 制約を少なくし、動作を楽な方向にする
- 重力、慣性力や反発力などの力の活用を考える
- 作業は両手使用を考え、同時に開始し、同時に終了する
- 動作の方向に対しては抵抗なく、その変換については円滑にする
- 作業に対してリズムを持たせる
このように、動作経済の原則と照合し、現状の作業のやり方に検討を加え、効率的な動作の方法を確立するために、工夫や改善を行うことは、優れた方法であるといえます。動作分析を行い、その結果に基づいて適切な診断を実施することにより、生産性向上などの成果に結び付けることが可能となります。
◇ ◇ ◇ ◇
“改善”は、「人のための改善」に撤することが重要です。労働強化を回避し、危険を及ぼす作業や、やりにくい作業などを徹底的に排除していきます。現場の“うめき(痛みや苦しみの声)”に耳を傾け、人に関わることから優先して技術開発を行っていかなければなりません。
“改善”を絶対に中途半端に終わらせてはなりません。人のための技術開発と人のための改善を徹底して行います。関係者が問題意識をどのように持つかが重要です。例えば、この作業で5分を改善したら、何がどのように変わるかなどをよく考えながら、結果として、人々に働きがいが生まれる改善でなければならないのです。
筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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