顧客満足度はどうやって決まるのか?:製造業のためのサービスビジネス入門(3)(2/2 ページ)
IoT(モノのインターネット)の進展により製造業においてもサービスビジネス拡大が期待されています。本連載ではサービスビジネスの基本的な話を分かりやすく解説しています。3回目となる今回は「顧客満足度の決定プロセス」について解説します。
IoTビジネスにおける顧客満足度
さて、ここで現在の「IoT(モノのインターネット)」における顧客満足度について考えてみましょう。
「期待レベル」に影響することとしては、その製品・サービスに関する評判や紹介資料の内容など、顧客にとっての「外部情報」と、顧客自身が感じているニーズや過去の経験などの「内発的情報」があります。
現在IoTについては、新たなモノづくりの主役として、大きな注目や期待がかけられています。また「モノづくりからコトづくりへ」という「製造業のサービス化」が進む中、多くの企業がビジネスチャンスだと感じている状況のため、外部情報、内発情報両面から期待レベルが上がっています。
そこで、IoTを使った製品やサービスの提供を検討している企業としては、事前期待を適度にマネジメントすることが必要になります。この「事前期待のマネジメント」を実現するには、以下の点に対する気配りが必要になると考えられます。
1.顧客ニーズに対する理解
言い古された言葉ではありますが「顧客ニーズに対する理解」はまさに「言うはやすし、行うは難し」を象徴しているようなものだと思います。ただ、どちらかといえば、BtoBビジネスの方がBtoCビジネスよりも取り組みやすい領域といえるかもしれません。
BtoBの場合には、振れ幅の大きな“個人の嗜好”が占める割合が少ないからです。「顧客ニーズ」は必ずしも顧客自身が既に気が付いているものだとは限りません。いわゆる“顕在化したニーズ”のみでなく、以下のような大きな視点でとらえていくことで整理がしやすくなります。
- 顧客にとって事業拡大あるいは売り上げ増加の機会を増やすことにつながるか
- 顧客のコストを下げることにつながるか
- 顧客サイド従業員、関係者の肉体的・精神的負荷を軽減させることにつながるか
- 顧客事業活動に伴うリスクを軽減させることにつながるか
- 顧客のCSR貢献度の向上につながるか
2.製品あるいはサービス購入前の実体験の提供
ついつい売り手としては購入してもらいたいという思いが強くなりすぎ、顧客の疑問に対して「できます」「問題ありません」という説得トークをしてしまいがちです。しかし、売り手側が顧客の抱える悩みやその背景を全て理解しているわけではありません。ここで説得トークあるいは説得用資料などで強く押しすぎると、顧客の実情からくる期待レベルと、それに対する使用時の認知レベルの差を生み出してしまう危険性があります。
これらを解決するためには、購入前に実際に製品あるいはサービスを体験してもらうことが効果的です。実際に体験してもらうことができれば過度の期待をかけられることもなく、顧客満足度を下げることも避けられます。
顧客満足度の向上は将来の継続的な取引につながる最大の要素です。製品あるいは顧客の想像以上のパフォーマンスを提供することを目指すのは当然として、事前期待のマネジメントにも力を入れることが重要となってきます。(次回に続く)
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