「日本版インダストリー4.0」の萌芽か!? 「つながる工場」に向けIVIが始動:スマートファクトリー(2/2 ページ)
ドイツのインダストリー4.0や米国のインダストリアルインターネットコンソーシアムなど、ICTを活用した新たなモノづくりが全世界で大きな動きを見せる中、国内でも企業間の垣根を越えて、標準化を進めようという動きが生まれる。「つながる工場」の実現を目指すコンソーシアム「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」の設立だ。
IVIの具体的な活動は?
工場およびモノづくり活動において「つながる」ことを実現するためには、システムやデータの連携が行われなければならない。そのため、標準化が必要になるわけだが、IVIでは「つながる工場」で実現するポイントを「データ形式」に絞り込み、4つの場面で「データ形式をそろえることによるメリット」を追求していくという。
その4つの場面とは、「設備間のデータ連携」「工程間のデータ連携」「工場間のデータ連携」「利用者間のデータ連携」の4つだ。この4つのレイヤーで「データ連携」を実現することで「どういうメリットが生まれるか」をメンバーで協議する。そして実際に企業間でこの連携に取り組み「メリットの生まれる形」を実現できれば、それを「リファレンスモデル」として公開していくことを目指す。
また企業全体が参加するトップダウン型ではなく、事業部や工場レベルで参加できるボトムアップ型の協業を進める。業務オペレーションごとのプロジェクトなど、小さな規模からメリットを実現できるような仕組みを目指す。そのため大企業だけでなく中小製造業でも活用が可能だとしている。
「現実的に、標準化を武器とするドイツのようなカッチリとした形は現状では難しいと考えている。メンバー企業がそれぞれの課題を出し、それを関係がありそうなメンバー企業同士で話し合い、そこで得られるメリットについては、それぞれの企業が持ち帰って活用する。ただし、そこで得られた成功モデルについては公開する、というような運営方式を考えている」と西岡氏は語っている。
日本版インダストリー4.0になれるか!?
現在まで日本の中でこのような連携を取る動きが生まれなかったのは、日系製造業および日系生産財メーカーがグローバルで強さを持ち、それぞれの利害関係が発生するためまとまることができなかった点が大きい。
しかし「製造業としてモノづくりを追求してきたが現在のドイツや米国の動きには大きな危機感がある。日本で培ってきたモノづくりの力を覆されかねないという恐れがある。日本の誇る現場力や人の力を生かした新しいモノづくりの形を作り出し、これらを逆に日本から発信していくことが必要だと考えている」と設立賛同者であるデンソー 情報企画部 担当部長の光行恵司氏は語っている。
西岡氏は「モノづくりは日本にとってずっと強さを誇ってきた領域だ。しかしそのポジションを維持できない可能性が生まれている。ただ日本のモノづくりの強みを体系化しそれをICTと結び付けて発信することで、逆にこの動きはピンチからチャンスに変えることができると考えている。今、日本の製造業は『乗るか、乗り遅れるか』という決断の時を迎えている」と述べている。
第4次産業革命は日本の製造業に何をもたらすのか――「インダストリー4.0が指し示す次世代工場の姿」コーナーへ
インダストリー4.0がもたらす製造業の変化
ドイツ政府が推進する国家プロジェクト「インダストリー4.0」。その目指すところは、現在よりも一段と高度化した生産システムです。同様のモノづくりのさらなる高度化に向けた取り組みは、米国や日本などでも巻き起ころうとしています。「インダストリー4.0が指し示す次世代工場の姿」特集では、「インダストリー4.0」が目指す姿や標準化の道のりなどを追うとともに、日本で高度な生産方法や生産技術に挑戦する動きを取り上げています。併せてご覧ください。
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