エレ各部門を分社化するソニー、復活のカギはリカーリング事業にあり!?:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ソニーは、2015年度(2016年3月期)〜2017年度(2018年3月期)における3カ年の中期経営計画を発表。新たにROE(株主資本利益率)を最重要経営指標に据え、売上高の成長を追わなくても高収益を実現できる企業体への変革を目指す。またエレクトロニクスの各事業部門を分社化し、独立採算を徹底させることで自律的に安定的な収益を生み出せる体制へと移行する。
事業の位置付けを3段階で評価
ROEを評価基準とした上でそれぞれの事業部門を「成長けん引領域」「安定収益領域」「事業変動リスクコントロール領域」の3つの領域に位置付け、それぞれに合わせた取り組みを進めていく。
例えば、成長けん引領域は、売上高、利益、投下資本を全て増加させるが、安定収益領域は売上高は横ばい、投下資本は減少させながら利益拡大を目指す感じだ。一方で事業変動リスクコントロール領域については、売上高や投下資本を減少させつつ効率化を図り、利益改善を図るという。これらについては各部門でROIC(投下資本利益率)をベースに評価をしていくという。
実際の事業としては、成長けん引領域には「デバイス分野」「ゲーム&ネットワークサービス分野」「映画分野」「音楽分野」が当てはまり、安定収益領域は「イメージング・プロダクツ&ソリューション分野」「ビデオ&サウンド事業」、事業変動リスクコントロール領域としては「モバイル・コミュニケーション分野」「テレビ事業」が当てはまる。
「モバイル事業とテレビ事業については、事業の収益性が課題である他、事業環境も厳しくリスクの大きなビジネスであるので、リスクの低減と収益性を最優先で取り組んでいく。現状では決まった話はないが、売却や協業についても視野には入れていく」と平井氏は述べている。
またこれらの各事業の収益性を確実に維持していくためにエレクトロニクスの各部門については、分社化を行い、独立採算制を追求していく。既にゲーム&ネットワークサービス分野や、モバイル・コミュニケーション分野、テレビ事業については、別会社としての体制になっている。今後は2015年10月をめどにビデオ&サウンド事業の分社化を行い、その後、可能になり次第、デバイス分野とイメージング・プロダクツ&ソリューション分野についても分社化する。
平井氏は「結果責任と説明責任を明確化し、持続的な利益創出を念頭においた経営を行うためのものだ。意思決定の迅速化と事業競争力の強化を実現する」と述べる。一方で「分社化の弊害もあるのは理解している。中央でコントロールする“求心力”と分社化された各企業で取り組む“遠心力”のバランスを取っていく」(平井氏)としている。
カギを握るリカーリングビジネス
また一方で持続的な成長を目指していく上で「リカーリングビジネス(商品の売り切りでなく継続的に収益を上げるビジネス)」の強化にも乗り出す。「例えば、金融部門は長い投資期間の中で積み上げてきた顧客との関係が安定収益につながっている。またPS関連のネットワークサービスも同様だ。映画部門のメディアネットワークビジネス、音楽出版ビジネス、デジタル一眼レフのレンズビジネスなども同様となる。BtoB向けのビジネスも同様だ。これらの継続的な顧客との関係性による安定したビジネスを構築していきたい」と話している。
これらの取り組みにより、2017年度にはROE10%以上、営業利益5000億円以上を目指す。平井氏は「まずは事業継続性を確保しつつ、規模の拡大に依存するのではなく、イノベーションにより利益をもたらすビジネスモデルを築きたい」と抱負を述べている。
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