見えてきたソニー構造改革の終着点、問われる“止血”後の世界:製造マネジメントニュース(3/3 ページ)
ソニーは2015年3月期(2014年度)第3四半期(2014年10〜12月)の決算見通しを発表し回復基調にある現状を示した。断続的に続いた構造改革の終わりが見えつつある中、今後の注目を集めているのが“止血”後の世界だ。
“止血後”のカギを握るデバイス事業
ソニーでは2014年12月にIRデーとして2017年度までの経営戦略を発表している。各部門ともに、基本的な方針としては、売上高を追わずに利益率を高めるという計画になっており、モバイル・コミュニケーション事業や、デジカメなどのイメージング・プロダクツ&ソリューション事業、ホームエンタテインメント&サウンド事業については、2014年度の見込み売上高よりも縮小する計画となっている。
その中で異色の売上高成長が見込まれているのが、デバイス事業だ。2017年度のデバイス分野の経営数値目標は「売上高が1兆3000億〜5000億円、営業利益率が10〜12%」となっており、2014年度の業績と比較すると、約1.5倍に売上高を伸ばす必要がある。
目下のところデバイス事業は好調を持続している。2014年度は、スマートフォン向けのCMOSイメージセンサーが絶好調。同事業については国内工場での生産を主力としているため、為替の円安効果もプラスに働いている。
第3四半期の決算では、売上高が前年同期比38.6%増の2929億円、営業損益は同781億円改善し545億円の営業利益となっている。通期の見通しについても前回予想比で売上高で600億円、営業利益で330億円の上方修正を行い、売上高は9500億円、営業利益は1000億円となっている。
また、CMOSイメージセンサーについては、生産を行う長崎テック、熊本テック、山形テックの3工場に約1050億円の新たな投資を行い、2016年6月末までにウエハーの月間生産枚数を従来の6万枚から8万枚へと拡大する(関連記事:ソニー、イメージセンサーの生産能力1.3倍に増強――大分テックは事業終息)。
CMOSの“一本足打法”から脱却できるか
ただ、2017年度のデバイス分野の経営数値目標は、好調なこれらの状況から踏まえても高いハードルだといえる。また、売上高および利益の成長の大部分が今は、スマートフォン向けのCMOSセンサーに頼っており、ここが崩れると一気に状況が悪化するというリスクを抱えている状況だ。
吉田氏は「イメージセンサーについては、微細、裏面、積層の3つのポイントでグローバルでの優位性を維持できている。画質、感度、スピードの領域で技術革新を進めていく。また従来はカメラなど映像用途が中心だったが、車載や医療など領域を広げていく」と述べている。
また、現在は苦戦する電池事業の導入拡大や、新たな成長の柱の創出など、製品分野の多角化は必須となるだろう。そのため、目標の達成にはさまざまなハードルがあると見られている。
ソニーでは2003年4月の“ソニーショック”以降、構造改革を行う状況が断続的に続いており、構造改革のめどが立ちそうになると次の問題が発生するというサイクルが生まれている。今度こそ、その負のサイクルを断ち切ることができるか。2015年度は正念場を迎える。
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