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ロボットの社会実装は進むか、フラワー・ロボティクスが「Patin」で目指す未来インタビュー(3/3 ページ)

AIと移動機能を持った“機能拡張型家庭用ロボット”「Patin」(パタン)を手掛ける、フラワー・ロボティクスの松井龍哉氏。ロボットベンチャーを10年以上経営する松井氏の目に、“ロボットブーム”ともいえる現状はどう写るのか。

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Patinの普及とビジネス化

――「既存機能の自律移動化」をコンセプトにするPatinは2016年の販売開始を目指すとのことですが、家庭用ロボットとしてはそれに先立ち、2015年2月にソフトバンクのPepperが販売開始されます。Patinのビジネスモデルとしてはどのような形態を検討しているのでしょう。

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PatinはAIによる自律走行可能な本体とアプリ(サービスユニット)、クラウドで構成される。写真は左からライトユニット装着、植栽ユニット装着、装着ユニットなしの状態(出展:フラワー・ロボティクス)

松井氏: まず、「Patinによって生活が便利で豊かになる」ことを発信したいと考えています。Patinは単機能のロボットではなく、上部に装着するユニットによってさまざまな価値を提供することが可能です。

 例えば照明機器メーカーと組めば、「本を読み始めたら自動で近づいていく」ような使い方ができます。ユニットの開発には外部の力を借りることになりますので、開発者へ「Patinをプラットフォームとして活用する魅力」を伝える活動も行います。多くの開発者を巻き込みながらさまざまな機能が生まれることで、使い方の幅が広がり、Patinの可能性も大きくなります。

 外部と協力して開発を進める、というやり方は既に実践していて、Patinの開発にはフリーランスのエンジニア、技術開発会社や工学系大学といったメンバーなどが参加してくれています。最近のものづくりの現場では、「こういうものが作りたかった」と思ってくれるエンジニアが集まって、プロジェクトとして運営するというやり方が増えてきています。ソーシャルリクルーティングなどインターネットを活用した新しい求人方法も広がっていますし、大学研究機関との交流も頻繁に行われています。企業における開発であっても、正社員にこだわる必要がなくなってきたのです。

 そうして社内外の力を集結して、Patinを「生活の中にないと物足りない」と感じてもらえるプロダクトにしていきたいのです。一般市販時の価格はまだ決定していませんが、Pepperの20万円(Pepperの本体価格は税別19万8000円)というのは、1つの判断基準になるかなと思います。

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 2015年はまずPatinの完成を目指す段階で、現在は急ピッチでSDKの開発を進めています(注:PatinはAI搭載ロボットのプラットフォームとして、サードパーティーにサービスユニット開発用のSDKを提供する)。

 外部のエンジニアを巻き込む上で注意が必要なのは、法務の部分をしっかり整えることです。弊社の場合は顧問弁護士と弁理士にプロジェクトメンバーとして契約し参加していただいています。会社の利益だけでなく、発明者にも有利になるような知財の活用を目指していて、そのため弁理士には技術開発のミーティングに参加してもらい、特許になりそうな部分を個別に技術者と詰める体制をとっています。例えば、出願料等の費用を社で負担し、その後の公平な分配を契約するなどです。フリーランスのエンジニアに出願料は負担となりますので、その部分を解消できると考えています。

 開発と平行して、Patinの理念を皆さんに知ってもらう広報活動も行います。加えて、ロボット開発の関係者にも関心を持ってもらうため、とあるロボット競技会のグローバルスポンサーを務めることも決まっています。アイデアを募るハッカソンもやろうと思っています。

 2015年後半はPatinの製造をしてくれるメーカーとの仕事になります。できる限り、Made in Japanにこだわれたらいいなあという気持ちもあって、ロボット製造を通じて、日本企業の潜在能力を引き出すこと一助になればとも思っています。フラワー・ロボティクスでは事業コンセプトとして「Design from Tokyo」を掲げていますが、それと「Made in Japan」の組み合わせが理想ですね。2015年は、フラワー・ロボティクスが先進的なロボットを製造するベンチャーから脱皮し、ロボットを広く消費者に届けるメーカーに生まれ変わっていく年だと位置付けています。

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――最後に、なぜ松井さんはロボットに惹かれるのでしょう。

松井氏: 登山家に「なぜ山に登るのか?」を尋ねるのと一緒ですね。あえて言えば、歴史的な産業創出に立ち会えることは人生をかけてもいい、やりがいのある仕事だと思っています。

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