検索
特集

ロボットの社会実装は進むか、フラワー・ロボティクスが「Patin」で目指す未来インタビュー(2/3 ページ)

AIと移動機能を持った“機能拡張型家庭用ロボット”「Patin」(パタン)を手掛ける、フラワー・ロボティクスの松井龍哉氏。ロボットベンチャーを10年以上経営する松井氏の目に、“ロボットブーム”ともいえる現状はどう写るのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena

「ビジネスが苦手な日本」を今後こそ覆す

――少し話を戻しますが、日本は世界でも有数のロボット開発技術を持っていながら、ビジネスに生かすことができないと言われてきました。もしいまでもその体質が変わっていないならば、克服するためにどうすればいいでしょうか。

松井氏: 私は今46歳なのですが、ちょうどパーソナルコンピュータ(PC)が普及していく様を見てきました。PCはもともと計算機ですが、いま、一般の人にとってはネットかワード、エクセルなどアプリケーションを動かすための機械になっていますよね。もしくはSNSだけとか。つまり、新しいモノが普及するにはアプリケーションが必要です。そして普及期に入ると、次にはデザインへの需要が高くなり、最終的に機能的な成熟期に入るとブランディングができるようになります。

 ロボットも制御のスゴさ、機能を押し出すだけでは、誰も買ってくれず、ビジネスにならないのです。それに「機能を満たせる」だけだと、最終的には価格競争になってしまいます。「何を目指していくか」をメッセージとして出していくか、「そのロボットなら、どのように生活を変えてくれるか」という哲学を発信できないと、選ばれなくなる時代なのです。

photo

 「第三次ロボットブーム」という言葉が定着するなら、その際、大企業の経営者がロボットを大きく発表した(2014年6月5日に、ソフトバンクの孫正義氏がPepperを発表したこと)ことは大きく取り上げられるでしょう。これは具体的な経済のひとつとしてロボットを語る土壌が整いつつあることを示しています。「技術はあるけど、ビジネスは苦手なニッポン」はロボットで覆せます。

 私が敬愛するソニーの盛田さん(ソニー創業者、盛田昭夫氏)は「新しいだけのモノは買ってもらえない。生活が変わるというイメージを出していくことが大切だ」と仰っていたそうです。

 確かに世の中が変わる瞬間というものはありますし、その瞬間を起こす自信はあります。ただ、ロボットについては、AIBOのトラウマ――高い技術があったものの産業として回転せず、継続できなかった。かわいらしいだけに、ロボット開発に携わる全てのヒトに大きなショックを与えた――を繰り返さないように、エコシステムを作らないといけないという危機感を持って行動しています。

 弊社は10年以上事業を継続しているベンチャー企業として、スタートアップとも大企業とも違う経験を積んでいます。いろいろと失敗もしてきましたが、学んだこともたくさんあります。

 例えば製品開発をメインにしている会社が最初につまずくのは販売や営業で、開発を優先して後手に回ってしまいがちです。しかし、ここも考え方ひとつで、サービス系が得意な会社とアライアンスを組み、分業して協力体制を築けば、各社が得意分野に注力できる仕組みを作ることができます。

 ただ、このやり方をうまく回すには、自分たちの製品の特徴を熟知し、どこの誰に届けたいかをはっきりさせておかないといけません。曖昧なまま進めると、意見の相違で空中分解してしまいます。製品を作る際のコンセプトワークは、販売やメンテナンスにも大きな影響を与えます。

 弊社も今後は販売やメンテナンスの分野でも人材を集めなくてはいけません。中でも製品とサービスのQC(クオリティコントロール)は最大限注意を払う必要があり、ここにどう資源を使うかでロボットの産業化の成否がかかっていると考えています。また、こういう部分は大企業の得意な部分でもあります。ベンチャー企業が苦手な製造マネジメントやメンテナンス、流通などの部分は、大企業からスピンオフした民間サービスが整うと良いと考えていて、既にそういう動きも始まっているように思います。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る