道路や工場設備の内部劣化を表面映像だけで診断、NECが世界初の技術:組み込み開発ニュース
NECは、道路橋などの構造物の内部劣化状態をカメラで撮影した表面映像から計測/推定できる「世界初」(同社)の技術を開発した。従来の人手で行っていた内部劣化の検査に掛かるコストが10分の1以下になるという。2015年度内の実用化を目指す。
NECは2014年12月9日、道路橋などの構造物の内部劣化状態をカメラで撮影した表面映像から計測/推定できる「世界初」(同社)の技術を開発したと発表した。1960年代の高度経済成長期に建設された道路をはじめ、寿命を迎えつつあるインフラの劣化の検査にかかる時間やコストを、従来の打音検査などの人手による点検と比べて大幅に削減できる。劣化診断のコストは従来比で10分の1以下になるという。2015年度内の実用化を目指す。
今回開発した新技術は、NECが持つ超解像技術、映像/画像鮮明化技術、4K超高精細映像高圧縮技術などの開発で培った映像/画像処理のノウハウを応用し実現した。具体的には2つの技術から成る。
1つは、構造物表面の多数点の微小振動を同時に計測する技術だ。まず、独自に開発した「被写体振動計測アルゴリズム」を使って、映像中の物体の微小な動き(振動)を、高速かつ高精度に検出する。この微小振動を解析するには、「カメラ画素数の100倍の解像度での動き解析」が必要になるが、データ量が多い場合には時間がかかっていた。これを映像圧縮などで培ったノウハウを用いて解析の高速化を図った。これらによって、高いフレームレートで撮影された映像の高速解析が可能になり、構造物表面の多数点の微小振動を同時に計測できるようになった。
もう1つは、表面振動から内部の劣化状態を推定する技術である。亀裂/剥離/空洞など、内部劣化が生じている箇所の振動パターンの違いを発見/検出できる独自の「振動相関解析アルゴリズム」を開発した。これにより、目視で発見できない構造物内部の劣化状態の高精度な推定が可能になった。
今回の新技術を使えば、カメラ映像から建築物全般について物体内部の劣化状態を推定できる。このため、道路インフラだけでなく、点検による設備の一時停止など事業機会損失の低減が望まれている工場やプラント内の大型設備などへの応用も期待できるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 橋やトンネルの維持にロボット活用、NEDOがプロジェクト着手
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、老朽化の進む橋やトンネルの状態を把握するモニタリングシステムと、このシステムに連動する維持管理ロボットの開発に着手した。 - アスラテックの「V-Sido OS」が建設機械操作ロボットの実現をサポート
国土交通省は、公募を行っていた「次世代社会インフラ用ロボット技術・ロボットシステム(災害応急復旧技術)」の「現場検証対象技術」が決定したと発表した。 - どうする? 社会インフラ設備の老朽化対策――急がれるインフラ点検ロボット開発
矢野経済研究所は、インフラ点検ロボットメーカーおよび販売会社、研究機関、関連団体などを対象に、国内のインフラ点検ロボット市場についての調査を実施(2014年4〜6月)。結果をレポートとしてまとめ、その概要を発表した。 - 老朽化進むインフラ設備をデータ分析技術とセンシング/無線技術で監視・管理
東京工業大学、オムロン ソーシアルソリューションズ、オムロンは、社会インフラの劣化進行の監視や地震などによる突発的な損傷を検出する新しいセンシング、モニタリング手法の共同研究を開始した。 - 「陸」「空」連携ロボで、トンネル崩落事故をなくせ!
三菱電機特機システムは、「TECHNO-FRONTIER 2013」(会期:2013年7月17〜19日)の特設会場「最先端のロボットメカトロニクス・デモ」において、千葉大学 野波研究室で開発された「完全自律型マルチロータ式電動ヘリコプター(ミニサーベイヤー)」と、三菱電機特機システムのクローラ型ロボット「CWDシリーズ」を組み合わせたロボット活用の新コンセプトを提案した。