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新工場の短期立ち上げ、ITはどうする? クラウド+iPadを選択したロキグループ製造IT導入事例(2/2 ページ)

グローバル化の波が押し寄せる中、中堅・中小製造業にとっても海外工場の設置は大きな課題となっている。その時、意外に課題として残るのがバックボーンとなるITシステムだ。マレーシアに海外初の生産拠点を設立したというロキグループでは、総勢5人のIT部門で7カ月という短期導入を実現したというが、その時どういう選択をしたのだろうか。

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システム選定をどのように進めたか

 ロキグループのITスタッフは総勢で5人。各拠点でITシステムを構築し、さらにその後もITスタッフを配置してメンテナンスを続けていくことが難しいことは明らかだった。「海外展開の知見もなく、短期でシステム導入を実現することを考えた場合、クラウドを活用し、スモールスタートを行うことは前提条件だった」と松本氏は語る。

 今回の海外展開において、必要となったITシステムは、販売会社用の基幹システムと工場用の生産管理システムだ。システムを選定するに当たり、両システムに共通の条件として、以下の3点を挙げた。

  1. 英語、日本語はもちろん言語追加が容易に行える多言語対応
  2. 分社・統合などの組織変更に柔軟な対応ができる
  3. ロキグループの本社システムと将来的な連携が行える

 また、販売会社用のシステム要件としては以下の3点に絞り込んだ。

  1. クラウドベースシステムで現地の運用負荷ゼロの実現
  2. 多通貨・多会計基準対応で自社での会計処理も可能
  3. 為替変動による差損益のシミュレーションが可能

 工場用の生産管理システムについては、以下の3点の条件を用意した。

  1. 見込み生産、受注生産の両方に対応可能
  2. iPad活用による情報活用の促進
  3. ロキグループ本体への展開を検討できる製品

 ロキグループの本社システムは既に老朽化が進んでおり、同じモデルを海外に持ち出すことはできなかった。また、今回新たに海外でシステムを導入するに当たり、将来的にロキグループ本体で導入するシステムとの連携が必須となる。これらの要件を考えた結果、工場用のシステムとしては東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が提供する「MCFrame CS Start-Up Edition」を、販売会社用のシステムとしてはB-EN-GとIIJグローバルソリューションズ(IIJグローバル)が展開する「A.S.I.A. GP SaaS on IIJ GIO」を導入することに決めた。松本氏は「実はコンペは2回行ったが、決めた条件に合い、実現性が高い提案は、このシステムしかなかった」と話す。

カスタマイズに応じないことが早期化に

 導入決定後は「トラブルも想定したが、思った以上に導入がうまく行った。販売会社は基本的に1社2カ月でシステム稼働作業を終え、全てを半年で終えることができた。また、工場システムについても当初はクラウドで考えていたが、現地の回線上の問題からパフォーマンスが維持できないことが判明し、急きょオンプレミスのMCFrame CS Start-Up Editionに切り替えたが、特に混乱なく計画を進行できた」と松本氏は話す。

 最終的にマレーシアの工場システムは2014年6月、シンガポールの販売会社のシステムは同年4月、韓国の販売会社システムは同年7月、マレーシアの販売会社のシステムは同年9月に稼働させることができたという。

 基本的には現場の要求するカスタマイズに応じない方針を貫いたことが早期導入とトラブル軽減につながったと松本氏は強調する。「既に海外で実績のある企業であれば別だが、当社は初の海外展開となるので、現地の要求にきめ細かく応えるよりもシステムに業務を合わせた方が早いという状況だった。調整を行いながら現地からの理解を得ていった」と松本氏は話している。実際に、システムに合わせた業務プロセスを構築していったことで「既存のプロセスの見直しなどにつながったケースもあった」(松本氏)としている。

iPadを採用した利点

マレーシア工場 概要

設立費用:2億円

建物:平屋建て 延べ床面積1400m2

従業員数:20人

生産能力:12万本(年間)

供給先:日系や現地のエレクトロニクス、食品、化学関連メーカー


 工場についてはiPadを本格導入できたことが大きな効果をもたらしたという。従来同社の日本工場ではハンディターミナルによる在庫や材料の管理を行っていたが「1つはハンディターミナルを導入するよりも安いというコストメリット面、もう1つは将来の拡張性など、システムの発展性の面からiPadを導入した」と松本氏は語っている。最終的に現在のマレーシア工場では、製造指示書と部材を照合するためのバーコード読み取りや棚卸し作業など、プロセスごとに6台の導入を行い、活用を進めている。

 特に同社が扱うようなフィルターでは、色や形では製品の種類が分からないため、正しい部材かどうかを判断する「部材照合」の作業が重要となるが、同システムもMCFrame CS Start-Up Editionにアドオンとして組み込んだため、データの照合や登録などの作業が非常に容易に行えているという。

photophoto マレーシア工場でのiPad活用の様子。部材照合などに力を発揮している(クリックで拡大)

 同社ではこれらの実績を基に既に日本の工場でもiPadの導入を準備しており、さらに利用範囲を広げていく方針だ。

「スモールスタートでもかなりのことができる」

 今回の導入を受けて松本氏は「スモールスタートを条件に、これらの大規模なシステム構築を行ったが、周辺のIT環境の進化により、かなりのことがより迅速に実現できるようになっているということが実感した」と話す。今後に向けてはこれらの知見を生かしながら、さらに海外拠点のシステム整備を進めていく一方、日本のシステムの再整備に取り組んでいく方針を示している。

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松本氏(中央)と同じ情報システムグループに所属する松枝氏(左)と河口氏(右)


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