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“はじめての生産管理システム”で事業多角化を狙う新日鉄住金化学製造IT導入事例(1/2 ページ)

生産管理システムを導入せず「Excelのバケツリレー」を続けていた新日鉄住金化学。なぜそこから脱皮しなければいけなかったのか。そこには2020年の「企業としてあるべき姿」があった。

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 「製造業なのに生産管理システムを入れていないのですか」――新日鉄住金化学は2011年から3年かけて、3つの事業分野における生産管理、販売管理、原料購買などのシステムの導入を推進し、2013年4月に本稼働を開始した。さらに今後数年かけてその他の事業のシステムの入れ替えを進める計画だという。しかし、それ以前には生産管理システムは導入しておらず売上高2000億円規模の製造業としては、非常に珍しい体制となっていた。

 そんな新日鉄住金化学がなぜ大規模なシステム導入に至ったのか。新システム導入に携わった新日鉄住金化学 業務システムプロジェクト 参事の戸早孝之氏と守田和彦氏に話を聞いた。



製鉄の副産物を製品化するビジネスモデル

新日鉄住金化学 プロフィル

創立:1956年10月

資本金:50億円(2013年3月末現在)

社員数:1660人(連結、2013年3月末現在)

代表者:代表取締役社長 勝山 憲夫

本社:東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDX 13階

事業内容:炭素材、工業用ガス、化学品、合成樹脂、ケミカル製品、潤滑材、電子材料などの製造、販売

Webサイトhttp://www.nscc.nssmc.com/


 新日鉄住金化学は1956年創業。新日鐵住金グループの化学事業分野を担う中核企業だ。もともとは新日鐵が製鉄事業を行う中で生じる素材から、基礎製品群と呼ばれる石炭化学および石油化学素材を製造・販売し成長してきた。これらに加え、約20年前からはこれらの素材で培ってきた技術を基に、オリジナルの機能性材料製品に取り組み事業領域を拡大してきた。現在では、18のビジネスユニットが存在し、回路基板材料や有機EL材料、光学・ディスプレイ材料などが成長。全売上高の約3分の1が、機能性材料製品群によってもたらされているという。

エスパネックス
フレキシブルプリント配線板用材料「エスパネックス」(出典:新日鐵住金)

 機能性材料製品群では、特に低熱膨張ポリイミドを使用した銅張積層板「エスパネックス」が、フレキシブルプリント配線板用材料として高い市場シェアを保持している。

 また、液晶ディスプレイ用レジスト材料「エスファイン」も、液晶ディスプレイのカラーフィルターで高シェアを獲得。特にブラックマトリクスで使われるブラックレジストインキが多くのディスプレイメーカーに採用されているという。

生産管理システムを導入していない問題点

 そもそもどうして新日鉄住金化学は生産管理システムを導入せずに運営してこられたのだろうか。

 それについては製鉄系化学企業としての特殊な事情があったという。新日鉄住金化学の主力である基礎製品群は、製鉄で生じる副産物から製造する。これらの副産物の大半は親会社である新日鐵住金から調達しており、また生成製品も品目が少ないため、Excelでの管理でも特に大きな問題が生じてはいなかったというのだ。「『製造業なのに生産管理システムを入れていないのですか』ととても驚かれた。それまではずっと“Excelのバケツリレー”状態が続いていた」と戸早氏は話す。

戸早氏
新日鉄住金化学 業務システムプロジェクト 参事 戸早孝之氏

 これらの基礎製品群を中心としていた時代は問題なかったが、より最終製品に近く、需要変動の影響を大きく受ける機能性材料製品群の売上高の割合が増えてきたことから生産管理システムの必要性が徐々に高まってきた。

 守田氏は「特に需要変動の大きい携帯電話端末や、ディスプレイなどに採用されたエスパネックスやエスファインなどが伸長したことにより、ことさら厳密な管理が必要になる。リードタイムを短くし需要変動に迅速に対応することが求められるようになってきた」と話す。実際にエスパネックスではシステムなしでは対応できずに、同事業のみで生産管理システムを導入して使用していたという。

 「機能性材料製品群を伸ばすためには、手作業で続けていくには限界があり、IT基盤の整備が求められる土壌はあった」と守田氏は話す。しかし、現実にはITシステムへの投資は後回しにされがちで、なかなか大規模な整備にはつながりにくい状況があった。

2020年のグランドデザインに向けた業務改革

守田氏
新日鉄住金化学 業務システムプロジェクト 参事 守田和彦氏

 これらの状況を一気に打破する原動力となったのが、同社が2009年に発表した「2020年のグランドデザイン」(ニュースリリース、PDF)だ。同社では従来3年規模の中期経営計画などを発表することはあったが、2009年3月にそれ以上の10年後のあるべき姿を示した「グランドデザイン」を制定。製鉄化学事業(基礎製品群)と機能材料事業を経営の柱として確立し、さらに新規事業本部による新たな事業開発を進め、売上高5000億円、経常利益500億円を目指す長期計画を示した。

 これらに伴って、必要となる業務改革活動に着手。組織力強化、人材力強化に続き、グループ6社の共通業務基盤整備が必要という判断から、システム整備を行うことになったという。戸早氏は「今回はグランドデザインに向けた基盤として、経営トップの主導により、大規模なシステム導入を実現することができた」と語る。

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