「はやい」だけではダメ! 今までにないものを作ってこそ3Dプリンタは意味がある:JIMTOF2014 基調講演(2/2 ページ)
工作機械と関連製品/技術の展示会「第27回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2014)」の基調講演として東京大学 生産技術研究所 教授の新野俊樹氏が登壇。「Additive Manufacturingを核にした新しいモノづくり――3Dプリンタの未来像」をテーマに付加製造技術の発展の歴史と今後の課題について語った。
他でできないモノを作ってこその3Dプリンタ
その意味で、積層造形技術の真価は「“ラピッド”領域以外のところにある。積層造形技術でしかできない高付加価値なモノを狙わなければ取り組む意味は見いだしにくい」と新野氏は強調する。
例えば、航空機のエンジン関連の部品や自動車などは、形状が複雑な一方で、流体を利用するために内部が中空であり、除去技術で製造するには無駄が多い。また成型技術で製造すると一体品として製造することができない。「これらの複雑な形状は従来技術でできず、積層技術で取り組む意味がある」と新野氏は語る。
また、個別の注文に対応するテーラーメイドやマスカスタマイゼーションと呼ばれる領域も積層造形技術だからこそ実現できる技術だという。例えば補聴器の耳型や義肢などは、個々人への合わせ込みは大量生産技術では難しい。一方、技術的な側面を考えれば、1つの形状において、複数の材料を採用した接合部のない造形物を製作できる点も、積層造形技術独自のものだという。
これらの「非“ラピッド”領域の利用分野をどのように作り出していくかが、積層造形技術をうまく活用するのに必要な点だ。活用に失敗している企業はこの観点がないところが多い」と新野氏は話す。
積層造形技術の課題
ただ積層造形技術についてはまだまだ課題が多いことも事実だ。新野氏は積層造形技術の抱える課題として以下の4つを挙げる。
- 加工技術としてのさらなる向上
- 最適な設計ノウハウの蓄積
- 造形物の物理法則の活用ノウハウの蓄積
- 付加造形技術の普及と教育
「まずは加工技術としてさらに向上を進める一方で、教育面やノウハウ面など、利用しやすい環境を作っていくべきだ」と新野氏は述べる。また、技術的な面でこれらの課題の解決に取り組んだ上で「利用する企業にとっては、新たに積層造形を織り込んだ製造技術や、ビジネスモデルの創出に取り組むべきだ」と語っている。
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