ソフトウェア単体から実車まで、テストって本当に大変:モデルベース開発奮戦ちう(6)(5/5 ページ)
京子たち三立精機の制御設計チームは、モデルベース開発を活用して、ついに変速機「CVT∞」の制御ソフトウェアを完成させた。しかし、この制御ソフトウェアがきちんと動くことを確認するためにはテストを行う必要がある。ソフトウェア単体から実車を使ったものまで、さまざまなテストが待ち受けているのだ。
最後は実車をテストコースで走らせる!
そうこうして、シャシーダイナモでの検証も終えることができた。
大島さん、小野さんのおかげで準備もうまくいって、予定通り完了したよ。
それは良かった。
今回、実車走行は顧客の方で実施することになっているが、その前にちょいとテストコースで走っておくか?
豊産自動車にも言ってありますのでよろしくお願いします。小野、実機検証での測定データは、HILSを含めてそれぞれのシステムで再利用すれば効率的なので管理しておいてくれよ。
はい。分かりました。
豊産自動車での実車試験でも一波乱?
三立精機での実機検証が完了し、大島さんは豊産自動車に納入したECUを使った実車試験に立ち会うため出張することになった。
鈴木さん、納入したECUの実車試験の立ち会いに参りました。
こちらでは既に問題なく動作していますよ。ちょっと早いですが、今から寒地、熱地、高地試験の打ち合わせをしましょう。
それ以降も順調に豊産自動車による実車適合検証が進んでいった。しかし……。
大島さん、一部仕様の不具合が見つかってしまいました。その仕様を修正するのに合わせて、ECUの内容も変更しなければなりません。しかし、正式に依頼を出してから、ECUが仕上がってくるまで検証を中断するというのはできれば避けたい。ここで何とかしてもらうことはできませんか? もちろんECUの内容変更は、後で正規に依頼しますので。
持参したノートPCには、モデルベース開発ツールからソフトウェア統合開発環境、適合ツールまで一式が入っています。取りあえずモデルを修正すれば、コードを生成してソースプログラムを作成し、ECUを仕立てることが可能です。
それでは、モデルを修正しますのでお願いします。
大島さんは現地でソースプログラムの作成作業を実施した。
検証のスケジュールを組み替えることなく予定通りに進めることができ、非常に助かりました。今回の修正分は正式に依頼します。ありがとうございます。
いやぁ、お役に立てて良かったです。
大島さんはそう言いながらも、今回のモデル修正の件を持ち帰って、正式依頼に基づきしっかり検証しようと考えていた(以下、次回に続く)。
執筆者プロフィール
JMAAB/今さら聞けないMBD委員会
JMAABのWebサイト http://jmaab.mathworks.jp/
モデルベース開発(MBD)を発展させるべく、自動車メーカーとサプライヤからなる団体『JMAAB』は13年前(2001年)に生まれました。このJMAABの10周年記念において、「MBDを分かりやすく伝えたい」という目的で発足したのが『いまさら聞けないMBD委員会』です。委員会メンバーが所属する10社でMBDを推進してきたエンジニアが協力し、これまでの経験や将来の夢を伝えるべく推敲を重ね、本連載は完成しました。皆さまのモノづくりの一助となれば幸いです。
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モデルベース開発に必要なツール購入も完了し、燃費世界一を目指すハイブリッド車「バンビーナ」に搭載する変速機「CVT∞」の設計がついに始まった。そこで重要になるのが、車両全体の設計を統括する自動車メーカーとの仕様のすり合わせ作業である。
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