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金融危機も、量産チームの厳しい評価も乗り越えて、モデルベース開発は進むモデルベース開発奮戦ちう(7)(1/3 ページ)

モデルベース開発の有効性を社内外に認知してもらった京子たち三立精機の制御設計チーム。量産チームにもモデルベース開発を展開しようと悪戦苦闘していたある日、世界を揺るがした、あのとてつもない金融危機が起こった。

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前回のあらすじ

モデルベース開発奮戦ちう

 京子たち三立精機の制御設計チームは、モデルベース開発を活用して、ついに変速機「CVT∞」の制御ソフトウェアを完成させた。しかし、この制御ソフトウェアがきちんと動くことを確認するためにはテストを行う必要がある。ソフトウェア単体から実車を使ったものまで、さまざまなテストが待ち受けているのだ……(前回の記事へ)。


「モデルベース開発奮戦ちう」の主な登場人物
「モデルベース開発奮戦ちう」の主な登場人物(クリックで拡大)

予算審議会の壁

 これまでの取り組みで、制御機能をモデルベースで開発することの効果は明白になった。このことは上層部に進捗報告とともに伝えられ、今後は量産展開を考慮して他部署でも使えるようにツールのライセンスを増やす必要があることも提案された。

 山田課長は、その予算確保に向けて、予算審議会に臨んでいた。

山田課長

現在、製品の根幹を成す組み込みシステムの開発に関しては、高機能化や複雑化などによって難易度が急激に高まっているにもかかわらず、低コスト、短期間で開発しなければならないという課題に直面しています。製品開発(電子機器を含む)に関わる製造業において“組み込みシステム開発におけるプロセスの革新”は最も切実なテーマなのです。そのためにもモデルベース開発は不可欠であり、設備投資は必要です。


 分かりやすい説明のように思えたが、会場はざわつき、ついには質問が飛び出した。

モデルベース開発だか何だか分らないそんなシステムに多額の予算を使って、それだけのメリットが出てくるの?


人はどのくらい減らせるの?


こっちだって、老朽化した設備の入れ替えや、新しい設備やツールだって欲しいものがいっぱいあるんだよ!


 まわりの人たちも同意したようにうなずいている。役員からも、

来月の予算審議会で、もう一度具体的な費用対効果示してくれないか。


という指示が出された。

 山田課長は、こんなけんもほろろの対応にも、負けるつもりはないようだった。デスクに戻るやいなや、早速メンバーを集めて役員からの指示を伝える。

山田課長

今回は残念だったけど、一応、来月の審議会のチャンスはもらえたのだから、京子ちゃん、大島君、五十嵐君、説明資料を作り直して、今度こそ承認をもらいましょう!


 かえって闘志に火が付いたように、この困難に立ち向かってやるという気持ちになったみたい。

 そこで、大島さんや五十嵐さんをはじめ制御開発チーム全員でモデルベース開発のメリット/デメリットを再度洗い出し、どの程度品質が改善され、開発効率としてどの程度の費用に相当するのかを中心に必死に資料を作り直した。

 2度目の審議会で山田課長は、みんなの思いを込めて、必要性・重要性を切々と説いた。その結果は、渋々ながらも何とか受理された。しかし、

山田課長

みんな、承認取れたわよ。でも、その代わりに予算がもらえず我慢を強いられた他の部署の人たちがいることも忘れないでね。そのためにも、何としても量産開発につなげて、全社に認められるような成果を出さないと。


五十嵐

そうですよね。頑張ります。でも、今夜くらいは打ち上げでもやりませんか?


大島

賛成!


京子

賛成! 大賛成!


山田課長

しょうがないわね。みんな頑張ってくれたから今日だけ特別ね。これからもっと忙しくなるんだから。


京子

開発のスタイルを変える、投資をしてもらうってこんなに大変なことなんだ。ちょっと開発効率が上がるくらいではダメなんだなぁ……。でも、成果に期待してくれたことも事実だから、全力で前のめらないと!


 久々の打ち上げにウキウキしながらも、私は気を引き締めた。

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