金融危機も、量産チームの厳しい評価も乗り越えて、モデルベース開発は進む:モデルベース開発奮戦ちう(7)(2/3 ページ)
モデルベース開発の有効性を社内外に認知してもらった京子たち三立精機の制御設計チーム。量産チームにもモデルベース開発を展開しようと悪戦苦闘していたある日、世界を揺るがした、あのとてつもない金融危機が起こった。
金融危機が発生! その時「バンビーナ」の開発は……
その後制御設計チームは、豊産自動車へのモデルの提出や、納品されたツールを量産チームにレビューするための準備などで大忙しになった。
経済・金融界だけでなく産業界にも大きな影響を与えたあの事件が起こったのは、そうやって私たちが仕事に忙殺されているときだった。
お昼のニュースで、何とかショックとかいってたんですけど、アメリカで何か大変なことが起こっているみたいですね……。うちは大丈夫かな?
いわゆる「リンカーン・ショック」と呼ばれる金融危機が発生したのだ。これを境に、世界的な経済の冷え込みから消費が落ち込み、金融不安で各種通貨から急速なドル安が進んで、自動車のような米国市場への依存が強い輸出産業に大きなダメージを与えた。最終的には、日本経済の大幅な景気後退をも招いたのである。
そのあおりは、三立精機にも業績悪化としてのし掛かり、経費削減/人員削減につながった。しかし「バンビーナ」の開発関係に関してだけは、人員の入れ替わりはあったものの投入するリソースに大きな変更はなかった。
バンビーナは、豊産自動車だけでなくわれわれもが社運を賭けて開発しているクルマだから必ずや量産に結び付ける。予算を譲歩してくださった方々のためにも、会社を去った人たちのためにも、まずは量産チームへのレビューを大成功させましょう。
前のめります!!
前のめります!!
前のめります!!
私が口癖のようにいつも行っている言葉に思わずつられて、大島さんと五十嵐さんも意気込んでいた。
そして何とかツールの作り込みと説明資料の作成を終えることができた。
しかし、そこまでして完成させたにも関わらず、量産チームによるレビューでの評価は極めて厳しいものだった。
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