インダストリー4.0に見る日独における生産技術のさらなる進化 ――独NRW州セミナー:FAニュース(2/2 ページ)
ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州経済振興公社とテュフ ラインランド ジャパンは「日独が描く未来工場・生産技術」をテーマに2014年9月26日にセミナーを開催し、インダストリー4.0をはじめとした生産技術のさまざまな現状と進化について紹介した。本稿では、そのうち欧州Kawasaki Robotics社長の高木登氏、テュフ ラインランド ジャパン 産業サービス部 部長代理 杉田吉広氏の講演内容を紹介する。
インダストリー4.0に必要なものとは?
テュフ ラインランド ジャパンは「インダストリー4.0における第三者機関の評価」をテーマに、産業サービス部 部長代理 杉田吉広氏が講演を行った。
インダストリー4.0とは、第4次産業革命を意味する言葉でドイツ政府が主導する産官学プロジェクトだ。従来の生産方法をICT活用によりスマート化し、「スマートファクトリ」の実現を目指す。サプライヤー、顧客、ビジネスパートナーなどの全ての生産情報を1つに結合し、工場が自律的な判断によって、ニーズに迅速かつ柔軟に反応して生産する姿を理想と描いている(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。
このインダストリー4.0を実現するのに必要なものについて、杉田氏は以下の4つを挙げる。
- 標準化
- システムマネジメント
- ネットワークのインフラ整備
- 安全性とセキュリティ
「複数の企業がネットワークに接続する環境を作るためには標準化が必須となる。また製品と製造システムの関係性はさらに複雑さを増すため、高度なシステムマネジメントが必要だ。さらにバックボーンとなるネットワークの品質はもちろん、各種システムの安全性やセキュリティの確保は重要な問題となる」と杉田氏は述べる。
特に安全性とセキュリティについては「より高度な生産システムを実現する上で今後さらに重要な要素となり得る」(杉田氏)としており、使用者や環境の安全を確保する製品安全、労働者や労働環境の安全を確保する機械安全、データの漏えいや不正アクセスからの保護などに、取り組む必要があると指摘する。
これらの安全性を確保するためにも第三者認証機関が必要だ、とするのが同社の主張だ。
「多くの企業の製品やサービスがつながり、さらにそこで安全性やセキュリティを確保するには、第三者による認証が貢献できる領域は大きくなる。将来的には『この工場で作られたものは安全だ』というスマートファクトリー認証のようなものも当社で展開できればと考えている」と杉田氏は話している。
関連記事
- ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」という言葉をご存じだろうか? 「インダストリー4.0」は、ドイツ政府が産官学の総力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクトだ。インダストリー4.0とは何なのか。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。 - インダストリー4.0はITと大量生産の支配から脱却する革命――ドイツ機械工業連盟
ドイツ機械工業連盟が記者会見を開催。日本とドイツの機械工業の状況について紹介した他、ドイツで盛り上がる「インダストリー4.0」が「特に中小企業の助けになる」(同連盟)との考え方を述べた。 - 生産の海外展開に成功するカギ――工場立地を成功させる20の基準とは?
海外工場立ち上げに失敗するケースは約3分の1にもおよび、その多くの理由が「立地」によるものだという。しかし、製品開発やサプライチェーンマネジメントについての議論は数多くあるが、なぜか「工場立地論」はほとんど聞くことがない。そこで本稿では、長年生産管理を追求してきた筆者が海外展開における「工場立地」の基準について解説する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.