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東大発のベンチャー企業、アクセルスペースが目指す“新しい宇宙の使い方“イノベーション・ジャパン2014基調講演リポート(2/2 ページ)

「イノベーション・ジャパン2014−大学見本市」の基調講演に、東京大学発のベンチャー企業で、超小型衛星を開発しているアクセルスペースの代表取締役を務める中村友哉氏が登壇した。同氏はアクセルスペースが発足した経緯や、超小型の人工衛星を利用した宇宙ビジネスの未来について語った。

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苦戦した起業への道

 一般的に、大型衛星の開発には約10年の時間と3億米ドルの費用が掛かる。しかし、アクセルスペースが開発する超小型衛星は2年の開発期間と約300万米ドルのコストで開発することができるという。中村氏は「アクセルスペースを起業しようと決断した際、超小型衛星のこうした資金・時間の両面で大幅にコストを削減できるというメリットがビジネスとして通用するのではないかと考えた」と話す。

 しかし、中村氏を含むアクセルスペースのメンバーは、約1年間の営業活動を続けたが顧客を見つけることができず、起業を断念しかけたという。中村氏は当時の状況を「とにかくさまざまなな企業を訪問したが、全く採用してもらえなかった。それもそのはずで、当時の自分たちには超小型衛星のメリットを、どういう目的で使ってもらえばいいかという視点がなかった」と話す。

念願の初受注へ

 起業を目前に苦戦を強いられる中村氏たちだったが、ある会社がアクセルスペースの超小型衛星に興味を持っているという情報で状況は一変する。その企業とは、気象情報の提供を行っているウェザーニューズだった。


北極海航路の図。赤線が北極海航路を表している(クリックで拡大)出典:アクセルスペース

 ウェザーニューズがアクセルスペースの超小型衛星に着目した理由には、2000年代後半から、北極海を通り太平洋と大西洋を結ぶ航路である「北極海航路」の商用利用に注目が集まっていたという背景があった。北極海航路は、他の航路より移動距離を3分の2に削減できるため、海運会社にとっては輸送コストを大きく抑えられるというメリットがある。

 こうした状況により、ウェザーニューズは多くの海運会社から北極海に浮かぶ氷塊を回避するために、北極海上の衛星写真や気象状況を送信して欲しいという要望を受けていた。しかし、既存の衛星が撮影する高精度の衛星写真の価格は高額なため、ウェザーニューズがリアルタイムに海上の情報を提供するというのは、ビジネスとして成立しないという課題があった。ウェザーニューズは、こうした課題は自社で衛星を持てば解決できるのではないかと考え、超小型衛星の開発を行うアクセルスペースに注目したという。

 「起業を諦めかけていた時に、ウェザーニューズさんからこうした依頼を頂けたのは本当に運が良かった。自社で超小型衛星を持つことで、宇宙からの新鮮な情報をいつでも手に入れることができるというメリットを活用してもらえる企業にやっと出会うことができた」(中村氏)。

アクセルスペースとウェザーニューズが現在開発中の超小型衛星「WNISAT-1R」(左)と、「WNISAT-1」が宇宙から撮影した画像(右)(クリックで拡大)出典:アクセルスペース

 その後、ウェザーニューズと超小型衛星の共同開発が決まった2008年の夏に、アクセルスペースも正式に企業として立ち上げられることになった。両社が共同開発した北極海を監視する超小型衛星「WNISAT-1」は、2013年の11月に打ち上げに成功している。現在、同衛星に改良を加えた「WNISAT-1R」の打ち上げを2015年に予定しているという。

宇宙からの観測情報をインフラに

 中村氏はアクセルスペースの今後のビジョンについて「超小型衛星の利用を爆発的に普及させていきたい」と語った。同社は50kg級の小型衛星「Hodoyoshi-1」を開発し、今後は同衛星を企業のニーズに合わせてカスタマイズするという方法でビジネスを拡大させていく方針である。

超小型衛星「Hodoyoshi-1」(左)と同衛星が宇宙から撮影した地球の画像(右)(クリックで拡大)出典:アクセルスペース

 また、最終的には地球全体を同社の小型衛星で囲むことでリアルタイムに地上の様子を観測することを目指しているという。「将来的に小型衛星で地球全体を囲むことで地上の状況をリアルタイムに観測し、そういったデータをインフラとして提供したい。渋滞情報の入手や、プラントの監視などさまざまな活用方法があると考えている。宇宙からの情報を一部のプロや企業だけが活用するのではなく、誰しもが利用できるようにしていきたい」(中村氏)。

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