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東大発のベンチャー企業、アクセルスペースが目指す“新しい宇宙の使い方“イノベーション・ジャパン2014基調講演リポート(1/2 ページ)

「イノベーション・ジャパン2014−大学見本市」の基調講演に、東京大学発のベンチャー企業で、超小型衛星を開発しているアクセルスペースの代表取締役を務める中村友哉氏が登壇した。同氏はアクセルスペースが発足した経緯や、超小型の人工衛星を利用した宇宙ビジネスの未来について語った。

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 科学技術振興機構(JST)と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2014年9月11〜12日の2日間、日本国内の大学や公的研究機関で研究開発された新技術を展示する「イノベーション・ジャパン2014−大学見本市」を東京ビッグサイトで開催した。同年9月11日に開催されたJSTセミナーの基調講演には、東京大学発のベンチャー企業で、超小型衛星を開発しているアクセルスペースの代表取締役を務める中村友哉氏が登壇。同氏はアクセルスペースが発足した経緯や、超小型の人工衛星を利用した宇宙ビジネスの未来について語った。


創業のきっかけは“空き缶”衛星

アクセルスペース 代表取締役の中村友哉氏(左)と空き缶衛星「CanSat」(右)(クリックで拡大)出典:アクセルスペース

 中村氏は、超小型の人工衛星を活用したビジネスを展開するアクセルスペースを2008年に創業した。その原点は、東京大学で宇宙工学を専攻していた同氏が在学中に開発した、空き缶を使った超小型衛星「CanSat」にあるという。CanSatは、350mlサイズの空き缶に小型のコンピュータやセンサー基盤、送信機といった実際の衛星に使用される機器を搭載した小型衛星。実際に宇宙まで飛ばすことはかなわなかったが、このCanSatの開発経験がその後、中村氏が宇宙ビジネスに携わる大きなきっかけになったという。

「CanSat」には実際の衛星に使用される機器が搭載されている(左)。中村氏は米国ネバダ州の砂漠でCanSatを地上から4kmの高さまで打ち上げた(右)(クリックで拡大)出典:アクセルスペース

次は宇宙へ! 超小型衛星「CubeSat」の開発へ

「UT's CubeSat XI」(左)が宇宙から撮影した地球の写真(右)(クリックで拡大)出典:アクセルスペース

 CanSatの開発を経験した中村氏は、次に実際に宇宙軌道に乗せることができる小型衛星の開発に取り組んだ。それは重量が1kgで、大きさが10cm3という超小型の衛星「UT's CubeSat XI(以下、CubeSat)」だ。大学の実験室内にクリーンルームを設置して、日々試行錯誤しながら開発に取り組んだという。

 「CubeSatの開発はCanSatとはスケールが全く違った。過酷な宇宙環境で衛星を正常に機能させるためにどうしたらいいかをひたすら考え、さまざまな専門家の方の力も借りながらな必死に完成させた。CubeSatの開発を決めた時の目標は、『宇宙で1週間生き延びること』だったが、2003年に打ち上げに成功した後、なんと今でも宇宙空間で無事に機能している」(中村氏)。

脱“学生衛星”を目指して――アクセルスペースの起業へ

 中村氏はCubeSatの打ち上げに成功した後、より性能の高い小型衛星の開発に取り組んだ。そのうちの1つである約8kgの超小型衛星「PRISM」は、宇宙空間から約30mの分解能を持つ画像の取得に成功したという。

超小型衛星「PRISM」(左)が宇宙から撮影した地上の写真(右)。約30mの分解能を持っている(クリックで拡大)出典:アクセルスペース

 中村氏はその後も複数の超小型衛星の開発を成功させた。その中で同氏は「技術的には、超小型衛星でも実用化され得るところまで近づいてきた。どうにかこの超小型衛星を社会の役に立つツールにしたい。このまま“学生が作った衛星”と呼ばれ続けたくない」と考え始めたという。


中村氏は大学で研究を続けるか、企業に就職するかを検討した結果、第3の道として起業選択したという(クリックで拡大)出典:アクセルスペース

 中村氏は“超小型衛星を社会に普及させる”という目標を達成するために、2つの選択肢を検討した。1つは大学に残って研究を続けるという道だ。しかし、大学はあくまでも研究機関であり、超小型衛星を爆発的に普及させるような動き方をすることは難しい。もう1つ、宇宙ビジネスを手掛ける企業に就職するという道もあるが、そういった企業が行う事業は官需がメイン。超小型衛星という前例のない分野に対してリスクをとって参入するメリットはどう考えても少ない。

 中村氏はこうした現在の宇宙ビジネスを取り巻く閉鎖的な環境を目の当たりにし、これまで考えたことのなかった「起業」という道を選んだのである。

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