トヨタが車車間通信不要の高速道路自動運転システムを公開、3次元HUDも:安全システム
トヨタ自動車は、高度運転支援システムの1つである「オートメイテッド・ハイウェイ・ドライビング・アシスト(AHDA)」の米国市場向けバージョンと、自動運転の要素技術となる新開発のレーザースキャナや3次元ヘッドアップディスプレイ(HUD)を発表した。
トヨタ自動車は2014年9月4日(米国時間)、安全運転支援に向けた自動運転技術の開発進捗状況を発表した。
今回発表したのは、高度運転支援システムの1つである「オートメイテッド・ハイウェイ・ドライビング・アシスト(AHDA)」の米国市場向けバージョンと、自動運転の要素技術となる新開発のレーザースキャナやヘッドアップディスプレイ(HUD)である。
AHDAは2013年10月に、国内市場をイメージした仕様のものが発表されている(関連記事:トヨタの自動運転はプラチナバンドの車車間通信を活用、2010年代半ばに商品化)。今回は、米国市場に合わせた形の改良が施されており、700MHz帯の車車間通信技術は搭載していないものの時速70マイル(約110km)まで対応できるという。2010年代半ばには、AHDAを基にしたシステムを米国市場で商品化する予定だ。
米国市場向けAHDAは主に3つの技術から構成されている。1つ目の「ダイナミック・レーダー・クルーズ・コントロール(DRCC)」では、77GHz帯のミリ波レーダーで先行車を検知し、一定の車速および先行車との車間距離を確保する。2つ目は「レーン・トレース・コントロール(LTC)」である。車両前方を撮影する車載カメラや先述のミリ波レーダーからのデータを用いて、白線や先行車の検知と最適な走行ラインの算出を行って、自動的にステアリングや加減速を適切に調整する。ドライバーが車線内を走行する際には、走行ラインをより簡単かつ安全に維持できるような支援を行う。
3つ目は、高速道路から一般道路に降りる際などに行う自動運転から手動運転への切り替えをスムースに行えるようにする専用のHMI(Human Machine Interface)の採用である。具体的には、走行中の道路状況やこれまでに蓄積されたセンサーの作動実績データに基づいてAHDAの自動運転機能の利用が制限され得る場面や、ドライバーモニターやステアリングタッチセンサーなどで検知しているドライバーの運転への集中度が下がっている場面などでドライバーに警告を出し、手動運転への切り替えに備えられるようにする。これは、常にドライバーが運転の主役であるべきとの考えから実装された機能だ。
要素技術では、レーザースキャナ「SPAD LIDAR(Single Photon Avalanche Diode Light Detection And Ranging)」と3D表示が可能なHUD「3D-HUD」を公開した。
豊田中央研究所と共同開発したSPAD LIDARは、トヨタ自動車が2013年1月の「2013 International CES」で公開した自動運転技術の実験車「AASRV」(関連記事:「あくまで運転支援技術研究の一環」、トヨタが自律走行車両の開発目的を説明)のルーフ上に搭載していたレーザースキャナと比べて、性能を向上するとともに、大幅な小型化と低コスト化が図られている。1つのセンサーで、ミリ波レーダーとステレオカメラの両方を用いるとの同じ機能があり、障害物の位置や形状を高精度で検知できる。外光にあわせて感度を調節するアクティブセンサーも搭載しているので昼夜を問わず利用可能だ。
検知角度範囲は55度で、垂直方向の解像度は96ラインとなっている。AASRVで使っていたレーザースキャナよりも検知角度範囲が狭いものの、小型化によって車両の各部に組み込めるようになったので、外観デザインなどに影響するルーフ上への搭載の必要がない。また一般的なレーザースキャナは、垂直方向の検知に課題があるため物体の大きさを含めた形状などを判別しづらい。しかし、垂直方向の解像度が高いSPAD LIDARはこの課題を克服できていると考えられる。
一方3D-HUDは、トヨタIT開発センターの米国子会社であるToyota Info Technology Centerを中心に開発が進められている。人と車両の連携向上を目指した革新的なインタフェースであり、クルマとドライバーが「チームメイト」になるキーデバイスだという。車両の状態、標識や交通状況などの情報を、フロントガラス越しの道路上に重なるように3D表示することができる。
これらの研究開発成果は、米国ミシガン州デトロイトで開催される「第21回ITS世界会議デトロイト2014」(2014年9月7〜11日)で公開される予定だ。
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