パナソニックの第1四半期決算、計画以上のペースで改善――営業利益28%増:製造マネジメントニュース
パナソニックは2015年3月期(2014年度)第1四半期の決算発表を行った。非重点部門の売却など事業整理を急ピッチで進める一方で重点領域で着実な成長を見せており、経営再建が順調に進んでいることを訴えた。
パナソニックは2014年7月31日、2015年3月期(2014年度)第1四半期(4〜6月期)の決算を発表した。
同社の第1四半期の業績は、売上高が前年同期比2%増の1兆8523億円、営業利益は同28%増の823億円、税引前利益は同55%減の551億円、当期純利益は同65%減の379億円、という結果となった。
経営再建に向けた取り組みは順調
パナソニックでは、2013〜2015年度の3カ年を対象とした中期経営計画を進行中で、2014年度はその2年目となる。2011年度、2012年度と7000億円を超える最終赤字を出したことにより、2013年度は構造改革を進め黒字転換を実現。再編へのめどを付けたところだった(関連記事:“普通の会社”パナソニックが3年ぶりに黒字転換――円安で国内生産も増強)。
2014年度については「引き続き構造改革の完遂を目指す他、2018年度の10兆円の目標に向けて、新たな成長に向けた仕込みを行う1年」との位置付けだ。その中で第1四半期については「想定以上のペースで改善が進み、いい滑り出しとなった。ただ第2四半期以降、住宅関連需要で減少が見込まれるなど、楽観視はできない状況が続いており、引き続き目標に向けて着実な取り組みを進めていく」とパナソニック 代表取締役専務 河井英明氏は語る。
課題事業として残されていたエアコン事業では、日本国内における消費増税の駆け込み需要で市場在庫が枯渇し、その補充需要が高まった他、中国で新製品が好調であることから売上高は前年同期比で8%増加し1574億円となり、増収効果により営業利益も150億円となった。2013年度にプラズマパネル生産の終息などを行ったテレビ事業については、売上高は前年同期比8%減となったものの、営業損益は同23億円改善し、2013年度第3四半期以来の四半期黒字を達成した。
「テレビ事業は第1四半期として黒字化したが年間の見通しとしては2014年度は赤字が残る見通し。ただ当初計画よりは前倒しで改善が進んでいるので年間での黒字化も見えつつある」と河井氏は語る。
液晶パネル事業は、テレビ向けから業務用途への移行を進め、売上高は前年同期比32%増の161億円となったものの、営業損益は同15億円の改善にとどまり50億円の赤字となっている。「パネル事業についてもさまざまな構造改革の手を打ってきているが、第1四半期における効果はまだそれほど出ていない。ただ計画に対しては若干早いペースで改善が進んでいる」と河井氏は述べる。追加施策として、今期から同事業を自動車関連の部品などを扱うオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS)に移管し、自動車向けのディスプレイに注力するなど、相乗効果を発揮できる体制に変更している。
また半導体事業については、売上高が同3%減の435億円となった他、営業損益も15億円悪化し53億円の赤字となっている。ただ、これは昨年度にグループ特別経営施策として全体的な支援があった効果の反動減であり、この効果を抜いた場合は「改善は進んでいる」(河井氏)という。半導体事業については、富士通および富士通セミコンダクター、日本政策投資銀行とシステムLSI事業の統合における正式契約も発表し、大きな施策としては一段落ついた形だ。
その他、パナソニックシステムネットワークスが行っていたキャリア向け無線ネットワーク事業のノキアソリューションズ&ネットワークスへの事業譲渡についても発表している。
有機EL、自動車用二次電池など今後に向けた投資も進行
これらの経営再建に向けた取り組みの一方で今後の成長に向けた投資についても発表を行った。中小型有機ELの技術進化に向けて、ソニー、パナソニック、ジャパンディスプレイ、産業革新機構の4社で新会社「JOLED(ジェイオーレッド)」を設立することを発表(関連記事:ソニーとパナソニックの有機EL技術を結集、新会社「JOLED」設立へ)した他、米国テスラモーターズが米国に建設する大型電池工場「ギガファクトリー」への出資も発表(関連記事:パナソニックとテスラ、巨大電池工場「ギガファクトリー」の建設協力で合意)。将来に向けた着実な手を打つ。
河井氏は「テスラモーターズとの良好な関係の中ギガファクトリーにおける電池生産を一手に引き受けることで基本合意した。B2Bの利点を生かしテスラモーターズの自動車生産量の増加に合わせて投資を進めていくことになる。ただギガファクトリーについては2014年度内に動く話ではなく、今期の投資予定には含んでいない」と語っている。
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