新型「コペン」は“新たなモノづくり”を見せたのか:車両デザイン(1/4 ページ)
ダイハツ工業の新型「コペン」が2014年6月に発売された。「東京モーターショー2013」で公開されたコンセプトカーの段階から新型コペンを追い続けてきたプロダクトデザイナーの林田浩一氏に、新型コペンの目指す“新たなモノづくり”や販売手法などについて分析してもらった。
ダイハツ工業の新型「コペン」は、2013年11月の「東京モーターショー2013」におけるコンセプトカーとしてのプロトタイプ公開以来、メディアだけでなく、ファン顧客や既存ユーザーに対しても継続的なティーザーキャンペーンを実施して、2014年6月の発売までの気分を盛り上げてきた。新型コペンの開発責任者であるCE(チーフエンジニア)の藤下修氏をはじめ、作り手サイドの人々が前面に出たこれまでの活動の様子からは、単なる新型車のプロモーションにとどまらず、新型コペンに関心を持つ人たちとのつながりを作ろうとしている姿勢が感じられた。
2014年6月19日に開催された発表会を終えて、いよいよ新型コペンは世の中に送り出されることになった。この新型コペンは、果たしてどのような“新たなモノづくり”を見せたのだろうか?
量産仕様の新型「コペン」から見えてきたこと
今回の発表会は、量産モデルの内外装デザインが初公開されたことを除けば、クルマそのもの(ハードウェアとしての新型コペン)については、新型コペンが生み出される背景にあるダイハツの危機感であるとか(関連記事:「KOPEN」はモノづくりの新しい仕組みのアイコンとなるのか(前編))、「D-Frame」や「DRESS-FORMATION」といった、これまでの技術説明会などで解説されてきたことなど(関連記事:見えてきた新型「コペン」のカタチ)を、総まとめで復習したような感じである。
デザイン(意匠)ということでは、予想通り(?)東京モーターショー2013のコンセプトカーとほぼ同じ姿のまま量産化された。ぱっと見ての違いは、ショーカーには装着されていたエンジンルームのカバーが量産仕様では未装着なことくらいだろうか。コスト面や歩行者保護性能確保のためのボンネット下のクリアランス確保の両面があったのだろうと想像できる(ベースの「ミラ イース」と比べると、全高を低くデザインするオープンスポーツカーのスタイリングを実現するために、フロントウィンドウ下端のカウル高さは下げているが、エンジン搭載位置そのものは下げていないということだったので、ボンネット下の空間余裕もさほどないと想像できる)。
少し残念だったのは、東京モーターショー2013で公開された2種類のデザインモデルのうち「Rmz」と称されていたモデルのみが「コペン ローブ(COPEN Robe)」として発売されることだ。
もう1つの「Xmz」と称されていたモデルの発売は2014年秋になるとのアナウンスであった。こちらはローブに当たるサブネームを公募していたが、現時点ではまだそのネーミングも公表されていない。発表会当日には「Xモデル」の仮称で展示されていた車両を見る限り、こちらの方も東京モーターショー2013のコンセプトカーの姿がほぼそのまま再現されることになりそうだ。
せっかくの外板交換システムの世界観を見せる/魅せるという意味では、発売時点で2つのモデルがショールームに並ぶ方がコンセプトをストレートに伝えやすかったろうに、と感じたのが正直なところだ。
また、東京モーターショー2013の会場では、パネルをパチパチと交換して、RmzからXmz、XmzからRmzへと着せ替えていた。しかし、量産仕様では、ローブとXモデル間での着せ替えはできないとのアナウンスがなされた。これは、安全面などから従来通りのスチール製となった左右のドアが、DRESS-FORMATIONの対象外とされたためだ。ドアの断面形状が異なるローブとXモデルでは「着せ替えはできない」ということになる。ドアについても「骨格+外板構造」にすれば、着せ替えられるようにはできたと思われるが、いくらホビー要素の強いオープン2シーターのクルマとはいえ、軽自動車としてのコスト面から越えなければならないハードルもあったのだろう。
前回記事を書いた2014年4月の技術説明会で、ドアはスチール製で外板交換構造ではないとの説明を聞いた時点で、2種類のデザイン間での着せ替えにどのような対応をするのだろうかと思っていたので、少し残念ではある。
ただ裏技ではないけれど、ローブとXモデルでドア外板の断面形状は異なるとはいえ、ドアの開口形状やシール面(ウェーザーストリップの当たり面。内外装部品の基準位置とも言える部分)を変えているとは思えないので、ドアごと交換すれば、ローブとXモデルとの間での着せ替えも可能だろう。補修部品としてドアパネルを丸ごと買ってまで「着せ替え」を試みるユーザーは、さほど多くはいないだろうが、発売から数年後、中古市場が形成される頃にはそういう着せ替えも起きているかもしれない。
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