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マキシムの車載事業、車載情報機器からボディ系や安全システムにも展開を拡大車載半導体

大手アナログICベンダーのMaxim Integrated Products(マキシム)が、東京都内で記者会見を開き、車載事業の取り組みについて説明。売上高の中核を成す車載情報機器分野だけでなく、ボディ系システムや安全システムなどでの事業展開も実を結びつつあるという。

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マキシム・ジャパンの滝口修氏

 大手アナログICベンダーのMaxim Integrated Products(マキシム)は2014年6月30日、東京都内で記者会見を開き、車載事業の取り組みについて説明した。

 会見の冒頭で、マキシムの日本法人であるマキシム・ジャパン社長の滝口修氏は、「車載分野という切り口では、マキシムはまだ新規サプライヤにすぎない。車載事業に真剣に注力するようになったのが、ほんの4〜5年前のマキシム・ジャパンにとってはなおさらそうだ。日本の車載市場はやりたいからと言って新興企業や外資系企業は簡単に参入できない。そこでまずは、車載情報機器向けテレビチューナなどから参入を図り、現在はこの車載情報機器分野の売上高が急速に成長している。そして最近になって、車載市場のメインストリームといえるボディ系システムや安全システムなどでの事業展開も実を結びつつある。注力してきた車載二次電池セル監視ICについても、2014年6月に市販ハイブリッド車への採用を報告することができた(関連記事:日立オートモーティブがマキシムの電池監視ICを採用、日産のハイブリッド車に搭載)」と語る。

マキシム・ジャパンの滝口修氏
マキシム・ジャパンの滝口修氏

 実際に、マキシム・ジャパン全体に対する車載事業の寄与率は、滝口氏が社長に就任した2010年ごろは5%程度だったが、現在は約30%にまで拡大している。その間、マキシム・ジャパンの売上高も伸びていることを勘案すると、車載事業は約4年半で8倍強もの成長を遂げたことになるという。

ECU搭載数は平均的な車両で40〜60個に

 車載事業の成長はマキシム・ジャパンだけのものではない。マキシム全体でも、注力分野に指定してきたこともあり大きく成長を遂げている。この成長の基礎なっているのが、自動車に搭載されるカーエレクトロニクスの増大である。マキシムでオートモーティブ・ソリューション・グループのマネージング・ディレクターを務めるKent Robinett(ケント・ロビネ)氏は、「10〜15年前は1台の車両に搭載されるECU(電子制御ユニット)の数は3〜4個程度だったが、現在は平均的な車両で40〜60個まで増えている」と指摘する。

マキシムのケント・ロビネ氏(左)と自動車への搭載が増加するカーエレクトロニクス(クリックで拡大) 出典:マキシム・ジャパン

 マキシムの車載事業が成長しているのは、カーエレクトロニクスの増大によって発生するさまざまな課題を、同社が得意とする高集積のアナログICによって解決を図っているからだ。会見では、同社が自動車メーカーやティア1サプライヤに提案中の製品が幾つか紹介された。

 まずは、映像データなどを最大3.125Gビット/秒(bps)の速度で伝送できるSERDES(シリアライザ/デシリアライザ)チップセットのGMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)製品である。高解像の車載カメラの映像データやHDコンテンツなどを伝送する用途を中心に提案を続けている。機器間を接続するワイヤーハーネスに同軸ケーブルが利用できるので、一般的なSTP(シールデッドツイストペアケーブル)を用いた接続よりもコネクタと配線のコストを半減できるとしている。また、ノイズ対策に必須のスペクトラム拡散通信に必要な回路を集積している点も、競合他社品に対する優位性になるという(関連記事:「同軸ケーブル対応SERDESが最適解」、マキシムが車両内の映像データ伝送で提案)。

左の図は、車載カメラや車載情報機器の接続に用いられるGMSL製品の事例である。1.5Gと書いてある箇所は1.5Gbps、3Gと書いてある箇所は3Gbpsの伝送速度で接続される。右の写真は、GMSL製品を用いたサラウンドビューを搭載したミニチュアカーによるデモの様子である(クリックで拡大) 出典:マキシム・ジャパン

 次に紹介したのが、海外向けの車載情報機器では必須機能とされているデジタルラジオに関わる製品だ。マキシムが「RF-to-Bits」と呼ぶ、デジタルラジオ対応のチューナIC「MAX2173」は、欧州のDABやDRM+、韓国のT-DMB、FM波といったデジタルラジオの信号を受信し、内蔵のA-Dコンバータでデジタル信号に変換する機能を備えている(関連記事:DABなどのデジタルラジオに対応するチューナIC、ベースバンド処理負荷を軽減)。DSPなどのプロセッサと組み合わせることで、ハードウェアを変更せずにソフトウェアで無線通信方式を変更できるソフトウェア無線(SDR)を実現できる。既に、国内外の車載情報機器メーカーに広く採用されている。

左の図はデジタルラジオのチューナIC「MAX2173」の回路ブロック図。RF回路とA-Dコンバータデジタルフィルタを集積しており、DSPなどのプロセッサと組み合わせればSDRを実現できる。右の写真は、MAX2173を用いたデジタルラジオチューナ搭載機器と、MAX2173の評価基板である(クリックで拡大) 出典:マキシム・ジャパン

 マキシムが日本市場で新たに参入を図ろうとしているのがキーレスエントリー/スマートキー向けのICである。キー側と車両側それぞれで、「信号を処理するプロセッサコアやトランスミッター/レシーバをはじめ、キーレスエントリーに必要な機能の90%を集積したIC」(マキシム)を開発している。最大の特徴は検出範囲で、車両からキーの距離が8m離れていても検出できるという。「競合他社品と比べて検出範囲は約2倍に達する」(マキシム)としている。検出範囲が広いので、車両側に搭載するアンテナも最小で2個で済ませられることもメリットになる。

左の図はキーレスエントリー/スマートキー向けICのキー側と車両側の概要。右の図は、その特徴である(クリックで拡大) 出典:マキシム・ジャパン

 数年前とは異なり、今や車載情報機器にUSBコネクタが搭載されるのは当たり前になっている。そのUSBコネクタを使って、ドライバーや乗員のスマートフォンやタブレット端末といったモバイル機器を充電することも多い。マキシムのチャージャIC「MAX16984」は、接続したモバイル機器の充電に最適な電圧値と電流値に動的に調整する機能を搭載している。

 例えばAppleの「iPhone」の場合、充電時の最適な電圧値は5V、電流値は1Aである。しかし、調整機能のないチャージャICの場合、車載バッテリーの状態などによってこれらの電圧値や電流値に達しないこともある。ある事例では、電圧値が4.61V、電流値が720mAとなり、30分間でバッテリー残量が40%から61%までしか充電できなかった。しかし、MAX16984を用いると電圧と電流を適正な値に補正できるので、同じ30分間で40%から69%まで充電できた。「自宅でスマートフォンを充電する場合、時間の余裕があることが多いのでこのようなことは気にならない。しかし、自動車の場合は、乗車中の一定時間内でより多く充電できるかどうかは重要な差異化ポイントになる」(マキシム)という。

一般的なチャージャICと「MAX16984」の比較
一般的なチャージャICと「MAX16984」の比較。MAX16984は補正機能により、同じ時間でより多く充電できる(クリックで拡大) 出典:マキシム・ジャパン

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