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ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【中編】インダストリー4.0(3/3 ページ)

ドイツ政府が主導するモノづくりの戦略的プロジェクト「インダストリー4.0」について解説する本連載。今回はメインテーマに「インダストリー4.0」を据え、盛り上がりを見せたドイツの産業見本市「ハノーバー・メッセ」の出展の様子について、現地を訪問した筆者が紹介する。

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OPC-UAが描く「インダストリー4.0」

 ところで、今回行ったデモでは上位系システムとの通信に「OPC-UA(OPC Unified Architecture)」を使っている。他の有効な通信規格としては「ADS(Automation Device Specification)」や「EAP(EtherCAT Application Protocol)」が選択肢としてある。ただ、リアルタイム性能が求められない要件のもとでは、現時点で最も対応機器が多くレベルの高いセキュリティ対策を行えることがOPC-UAの特徴だ。

 OPC-UAはプラットフォームに依存せず、セキュリティレベルが高くかつ情報モデル構造を持つ汎用性の高い通信規格だ。OPCはマイクロソフトのOLE/ COM/ DCOM規格から進化した20年の歴史がある規格だが、OPC-UAが世に出てからはメーカーやOSを問わず、垂直方向・水平方向ともに柔軟に通信ができることから、欧米のメーカーを中心に普及が進んできている。

OPC-UAの展示
ハノーバー・メッセでのOPC-UAの展示。「現場のセンサーからエンタープライズシステムまで」というコンセプトであらゆる階層の通信を、シーメンス、フェニックス・コンタクト、ベッコフ、ボッシュ・レックスロス、横河電機、ロックウェルなど、異なるメーカーの機器を使い、実演した。
カタログ
OPC Foundationが発行しているIndustry 4.0関連のOPC-UA事例集.OPC-UAをインダストリー4.0の必須規格として普及を進めている

 これまでは利用範囲がそれほど広くなかったため、同一のメーカーの機器を使えば特に困ることがなかった。そのためOPC-UAも、その機能性や汎用性に対する評価はあったものの、製造現場に対する必須要件とはならなかった。しかし「サイバーフィジカルシステムの実現」を考えた場合、どんな装置でも階層やメーカーによらず通信できることが求められる。そのため、OPC Foundationでは「インダストリー4.0では必須の通信規格」と位置付けてOPC-UAの普及活動に力を入れている。

 「インダストリー4.0」はドイツの政策なので、これまで「OPC-UA/ Industrie 4.0」のカタログはドイツ語版(PDF)しか無かった。しかし「インダストリー4.0」そのものが英語圏でも注目を集めるようになったため、新たに英語版のカタログ(PDF)をOPC Foundationが用意したという。このカタログにはOPC-UAを活用することで「つながるシステム」を実現した事例が多く紹介されている。


 今回は「インダストリー4.0」が中心として取り上げられた、ハノーバー・メッセ 2014のレポートを行ったが、【後編】では【前編】で約束した「つながる工場・装置」というテーマで、その事例などを紹介していく。(次回につづく


筆者プロフィル

川野氏

川野俊充(かわの・としみつ) ベッコフオートメーション(日本) 代表取締役社長

東京大学理学部 物理学科 卒業、カリフォルニア大学バークレー校 ハース経営大学院経営学修士、慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)。「EtherCAT」開発元のベッコフオートメーションにて、ソフトウェアPLC/NC/CNCのTwinCATによるPC制御ソリューションの普及に努めている。



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