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エアバッグが開かないのは衝突安全ボディのせい!?いまさら聞けない 電装部品入門(14)(3/3 ページ)

衝突事故が発生した際には、必ず展開して乗員を守ってくれると信じられているエアバッグ。しかし実際にはエアバッグが展開しないことも多い。これは、衝突安全ボディが、エアバッグを展開する必要がないレベルまで衝撃を吸収してくれているからだ。

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車両の損傷状態とエアバッグの作動条件は無関係

 ここまでで運転席エアバッグの基本的な作動条件を何となくご理解いただけたかと思います。

 このような状況下に車両が遭遇したと判断しているのは、あくまでもフロントインパクトセンサーとSRSコントロールユニットです。

 一般的なフロントインパクトセンサーの取り付け位置は、左右のフロントサイドフレームですので、これらが衝撃を検知しにくい状況では展開判断ができません。例えば、電柱のような棒状の障害物に車両中央から衝突した場合や、車高が高いトラックなどへの潜り込み衝突がその状況に当てはまります。

電柱への衝突と潜り込み衝突
電柱への衝突と潜り込み衝突

 電柱の場合は、衝撃が左右サイドフレームの間をすり抜けてしまいます。潜り込みの場合は、左右サイドフレームの上側に衝撃が加わるので、フロントインパクトセンサーからの情報だけでエアバッグの展開判断を行っているシステムでは検知できません。

 仮に人間が持つ視覚+状況判断力によって事故の大小を判断できれば話は別ですが、現時点では人間と同じレベルで展開判断を行うことはできません。

 人が見た目の印象を重視するのは致し方のないことですが、どれだけ派手に損傷しているように見えても、展開条件に当てはまらなければエアバッグは展開しません。最近の自動車は、先述したように衝突安全ボディが採用されており、特に車両前方に関しては意図的につぶれやすい設計が施されています。このため、

「車両前方が大破しているのに、どうしてエアバッグが展開しなかったの!?」

という考えに及んでしまうのも理解できます。

 何度も言うようですが、エアバッグの展開判断において最も重要なのは、車両の損傷状態ではなく、あくまでも居住空間への衝撃力の大きさです。車両前方が大きくつぶれることで衝撃をしっかりと緩和できていれば、エアバッグを展開させる必要がないのです。

「いやいや、取りあえず大きく損傷している場合は展開しておけばいいのに」

というご意見も理解できますが、実はエアバッグを展開するという判断には大きな危険性が秘められているのです。



 次回はエアバッグ3部作の最終回。エアバッグを展開することによって乗員にもたらされる危険性と、エアバッグ搭載車の注意点を紹介します。

筆者プロフィール

カーライフプロデューサー テル

1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。



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