1段式エアバッグが低速/高速の衝突に両対応、展開時の負傷を防ぐ仕組みも:安全システム
General Motors(GM)とタカタは、低速時と高速時、両方の衝突事故に十分な乗員保護能力が得られる1段式エアバッグを開発。エアバッグが原因となる負傷を防ぐ仕組みも搭載した。衝突時の動作を撮影した映像も公開されている。
General Motors(GM)は、小型車「Chevrolet Cruze(シボレー・クルーズ)」の2013年モデルに、タカタと共同開発した運転席用エアバッグを搭載すると発表した。エアバッグを膨らませるインフレータを1つしか使わない1段式エアバッグであるにもかかわらず、低速時と高速時、両方の衝突事故に十分な乗員保護能力が得られる。エアバッグが原因となる負傷を防ぐ仕組みも搭載されている。
衝突事故による運転手や同乗者の負傷を防ぐエアバッグは、低速で衝突した場合には比較的ゆっくりと、高速で衝突した場合には素早くふくらんだ方が乗員にかかる衝撃をより低く抑えられることが知られている。このため、低速衝突時用と高速衝突時用に、膨らませる速度が異なる2つのインフレータを搭載した2段式エアバッグが広く利用されるようになっている。
新開発のエアバッグの名称は、「フレキシブルベンティングエアバッグ(Flexible Venting Airbag)」。インフレータを1つだけ使用する1段式エアバッグである。2段式エアバッグで、低速衝突時に用いるゆっくりと膨らませるタイプの低出力インフレータだけを搭載しており、エアバッグシステムの小型化と軽量化を実現した。
内部には、エアバッグが一定サイズ以上膨らまないようにつなぎ止められる「Internal Tether」と、エアバッグに乗員の体重が掛かったときにエアバッグ内部の空気を放出する「Flexible Vent Tether」が組み込まれている。このFlexible Vent Tetherの効果により、膨らんだエアバッグに身体が押しつけられることによって負傷する可能性を低減できるという。
GMは、フレキシブルベンティングエアバッグを搭載するシボレー・クルーズの2013年モデルが、米国運輸省道路交通安全局の衝突テストでも、2段式エアバッグを搭載していた従来モデルと同様に、最高評価となる5つ星(5-Star)を獲得できたとしている。
フレキシブルベンティングエアバッグの映像は、以下のリンクから確認できる。
映像1:「Flexible Vent Tether」によってエアバッグ内部の空気を放出する効果
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