トヨタの新開発アトキンソンサイクルエンジン、「マツダやホンダより高性能」:エコカー技術(3/3 ページ)
トヨタ自動車が開発した「高熱効率・低燃費エンジン群」は、同社がハイブリッド車専用エンジンに採用しているアトキンソンサイクル化や高圧縮比化の技術を、通常のガソリンエンジンにも適用したものだ。しかし、走行モーターを使わない通常のガソリンエンジンに求められる走行性能を確保するには、さまざまな工夫が必要だった。
「最大熱効率は40%以上も達成可能」
高熱効率・低燃費エンジン群の内、今回具体的な製品として発表されたのは、排気量1.3l(リットル)のガソリンエンジンと、排気量1.0lのガソリンエンジンの2機種だ。排気量1.3lのガソリンエンジンは、圧縮比を13.5まで高めるとともに、最大熱効率は38%を達成した。この38%という数字は、「初代プリウスの専用エンジンと同等以上であり、コンベエンジンとしては世界トップレベル」(足立氏)だという。
排気量1.0lのガソリンエンジンは、4-2-1排気管を採用していないため圧縮比は11.5にとどまる。損失低減の方策も、排気量1.3lのガソリンエンジンと比べて幾つか省略されているものの、最大熱効率は37%となった。なお、従来の排気量1.3lガソリンエンジン、排気量1.0lガソリンエンジンとも、最大熱効率は35%だった。
高熱効率・低燃費エンジン群は、今後2年間で14機種が投入される。今回発表した製品は、自然吸気ガソリンエンジンだったが、ディーゼルエンジンやターボチャージャなどの過給機付きエンジン、ハイブリッド車専用エンジンも14機種の中に含まれている。また、エンジンの排気量については、3lを上回るクラスまでが視野に入っているという。2016年度以降は、トヨタ自動車が生産する車両の30%に高熱効率・低燃費エンジン群が搭載される見込みだ。
足立氏は、「14機種の投入後もエンジンのさらなる高効率化を目指す。最大熱効率ではは40%がひとまずの目標になるが、40%以上も達成可能だと考えている」と意気込む。
マツダやホンダのアトキンソンサイクルエンジンより性能は上
今回トヨタ自動車は、コンベエンジンのアトキンソンサイクル化に踏み切ったわけだが、実は既に先行事例がある。マツダが2011年6月にマイナーチェンジした「デミオ」から採用を始めた新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-G」と、ホンダが2013年9月に発売した3代目「フィット」の排気量1.3lのガソリンエンジンである。
両エンジンとも高圧縮比化を果たしており、SKYACTIV-Gは14、フィットの排気量1.3lガソリンエンジンは13.5となっている。それでは、後発となるトヨタ自動車の高熱効率・低燃費エンジン群は、何が優れているのだろうか。
足立氏は、「急速燃焼の面で競合他社よりも半歩は進んでいると考えている。実際にエンジンのトルク曲線で比較すると、エンジン回転数の幅広い領域で競合他社よりも大きなトルクが得られている」と述べている。
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