トヨタの新開発アトキンソンサイクルエンジン、「マツダやホンダより高性能」:エコカー技術(2/3 ページ)
トヨタ自動車が開発した「高熱効率・低燃費エンジン群」は、同社がハイブリッド車専用エンジンに採用しているアトキンソンサイクル化や高圧縮比化の技術を、通常のガソリンエンジンにも適用したものだ。しかし、走行モーターを使わない通常のガソリンエンジンに求められる走行性能を確保するには、さまざまな工夫が必要だった。
燃焼改良と損失低減に向けた4つの取り組み
高熱効率・低燃費エンジン群では、燃焼改良と損失低減のため、大まかに分けて4つの取り組みを行った。
1つ目は「急速燃焼」である。エンジン気筒内に吸い込む吸気によって発生するタンブル流(縦渦)の強さが従来比で約2倍になる新形状の吸気ポートを採用し、燃焼効率を大幅に高めた。一般的に、タンブル流の強さを高めると、吸気量を示す流量係数が低下するためトルクや出力といった性能は下がってしまうが、新形状の吸気ポートでは、タンブル流の強さと流量係数の両方を高めることに成功した。
2つ目の「高圧縮比化」では、高圧縮比のガソリンエンジンで高い出力や大きなトルクを引き出す際に発生しやすいとされるノッキングの回避を目指した。まず、先述した急速燃焼によって、ノッキングが起こる前に素早く燃料を燃焼させる。次に、インテークマニホールドの負圧によって行う燃焼室内掃気の効率を、新たに採用した4-2-1排気管で大幅に改善し、燃焼室の残留ガス割合をできる限り減らせるようにする。そして、ノッキングの原因となる燃焼室内の温度上昇を抑えるために、気筒の壁温を制御するウォータージャケットスペーサーを採用した。このウォータージャケットスペーサーは、燃焼室内の温度の低い部分を暖めて、摩擦損失を低減する効果も備えている。
1つ目の急速燃焼と2つ目の高圧縮比化により、コンベエンジンとして用いるのに必要な出力やトルクなどの性能を確保することはできた。
3つ目の「ポンピングロス低減」は、アトキンソンサイクル化と大量クールドEGR(排出ガス再循環システム)によって実現している。アトキンソンサイクル化のため、新たに電動連続可変バルブタイミング機構(VVT-iE)の採用により、吸気バルブやEGRバルブとの協調制御を最適化した。ただし、吸気バルブのリフト量までは変化させていないという。
アトキンソンサイクルエンジンの特徴である吸気バルブの遅閉じについては最大110度にまで広げた。これは、アクアやプリウスのハイブリッド車専用エンジンを上回る数字だ。またクールドEGRのEGR率も25%と大きい。
4つ目は、各種損失の低減である。先述したウォータージャケットスペーサー以外にも、ピストンスカートの表面改質、樹脂、オイルポンプ容量の低減、曲げロス低減補機ベルトなどによって損失を低減した。
足立氏は、「燃費向上の貢献度は、急速燃焼や高圧縮比化による燃焼改良が50%程度、損失低減が20〜30%で、残りはエンジン全体の協調制御によるものだ」と語る。
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