韓国企業の4分の1が破綻寸前、日本は“生ける屍”が懸念――破綻予測調査:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
アリックスパートナーズは、独自の企業破綻予測モデルに基づく日本や韓国市場における調査内容を発表した。韓国企業は上場企業の26%が破綻危機とされるなど、危機的な経済状況となっていることが明らかになった一方、日本企業に対しては“生ける屍”問題が懸念されるという。
韓国上場企業は26%が破綻予備群
アリックスパートナーズが日本と同様に韓国とシンガポールの調査も行っている。これらの国と日本の状況を比較した場合、日本の破綻予測企業の比率は極端に低い結果となっている。2013年第3四半期(7〜9月)を見た場合、韓国は26.0%、シンガポールは12.2%が破綻予測企業となっている。
韓国は、2012年第4四半期(10〜12月)も破綻予測企業の比率は27.0%で、1%減少しているものの、企業の危機レベルは高いままとなっている。実際に2013年5月には財閥系で造船では韓国トップ5に入るSTXグループが破綻した他、出版や食品、建設などを抱える中堅財閥の熊津グループ(ウンジングループ)も2012年秋に破綻した。「日本では企業規模の小さい業界の危険度が高かったが、韓国は財閥系などまで影響が及んでいることから状況は深刻だ」と野田氏は語る。
要因としては、ウォン高による輸出産業への打撃と、不動産不況など内需の低迷があるという。特に危険度が高い業界は「造船」「金融」「不動産」「重機」などで「資金の投資から回収までのリードタイムが長いところが、急な経済環境の変動に付いていけずに厳しくなっていることが特徴的だ」と野田氏は分析する。
日本には“生ける屍”企業が内在する
これらの数値を見ていると、アジア各国に比べ日本企業の復活に期待が持てそうだが、そう簡単ではない。問題となっているのは“生ける屍”となっている企業だ。
EWMは過去の健全企業と破綻企業のデータを基に分析を行っている。しかし日本には上場企業はつぶさないようにする商習慣がある。厳しくても破綻にならなかったケースが過去に多いため、破綻予測企業の比率が必然的に下がっているというわけだ。
「公的資金の注入や周辺企業の援助があるため“生きているように見えるが実際には死んでいる”企業が、実際には数多く存在しており、それらを含めると決して楽観はできない状況が続いている。見掛け上でリスクが下がっている間に抜本的な改革に取り組む必要がある」と野田氏は警鐘を鳴らす。
財務リストラのみの企業再生は失敗する
一方で「日本で行われている企業再生のやり方が破綻予備軍を増やしている」(野田氏)と企業再建方法の問題点も指摘する。中長期的な視野に立った再建策ではなく財務リストラばかりが先行し、結局事業が維持できなくなるケースだ。
例えば、2013年第2四半期に破綻したある企業の例では、EWMにより2010年半ばに破綻リスクが警告レベルに達した。そこで経営陣は子会社や事業部門の売却、人員削減などの財務リストラを実施し一時的キャッシュフローが改善した。しかし、ビジネスに必要なリソースも売却してしまい、オペレーションの改善も不十分だったため、2011年第3四半期には再び警告レベルに達し、最終的には破綻に至った。
「これは日本企業における再生失敗の典型例だ。破綻リスクが警告レベルに達した場合、迅速なキャッシュの確保は最優先事項であるが、そのために今後の再建に必要なリソースを手放せば、再建はおぼつかなくなる。キャッシュ確保とともにまずオペレーション改善の計画を作らなければならない」と野田氏は再建方法について提言している。
関連記事
- 「アップル、サムスン以外はみんな危機」再生請負人が見た民生電機
アリックスパートナーズは、民生用電子機器市場に関する調査結果を発表し、同業界の56%の企業が財務上危機的な状況にあり、業界全体が危機を迎えているという見通しを示した。 - スマホで負けたのは“握手しながら殴り合えなかった”からだ
NECがスマートフォン事業から撤退を発表し、パナソニックも個人向けのスマートフォン事業休止を宣言した。“ガラパゴス”環境で春を謳歌した国内スマートフォン端末メーカーが相次いで苦境に立たされた理由はどこにあったのか。京セラや外資系端末メーカーなど携帯電話関連業界に身を置いてきた筆者が、経緯を振り返りながら問題点を分析する。 - 中国で自動車、部品ともに日本の存在感低下――現地化進む日産、逆襲のトヨタ
アリックスパートナーズは、中国自動車関連市場の調査結果を発表。成長続ける中国市場において、自動車メーカー、部品メーカーともに日本企業は存在感を下げつつあることを明らかにした。 - 中国は航空機サプライチェーンの「勝ち組」になるのか
アリックスパートナーズは、航空機関連市場に関する調査結果を発表した。同調査結果では、MRJや炭素繊維素材の利用拡大などで日本企業の存在感拡大はあるものの、航空機のサプライチェーンにとって、今後は中国が存在感を高めるという見通しを示している。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.