トヨタが「世界で最も進化したハイブリッドレースカー」を披露:モータースポーツ
トヨタ自動車は、2014年シーズンWECの参戦車両となる新型ハイブリッドレースカー「TS040 HYBRID」を公開した。排気量3.7lのV型8気筒自然吸気ガソリンエンジンと、前輪と後輪に搭載した2個のモーターにより最高出力は合計1000ps。「世界で最も進化したハイブリッドレースカー」(同社)だという。テスト走行映像も公開されている。
トヨタ自動車は2014年3月27日、2014年シーズンのFIA世界耐久選手権(WEC)の参戦車両となる新型ハイブリッドレースカー「TS040 HYBRID」を公開した。
TS040 HYBRIDは、排気量3.7l(リットル)のV型8気筒自然吸気ガソリンエンジンから得られる520ps(382kW)と、前輪と後輪それぞれに搭載した2個のモーターによる480ps(353kW)、合計1000ps(735kW)の最高出力を誇る。同社によれば「世界で最も進化したハイブリッドレースカー」だという。
新レギュレーションに合わせてハイブリッドシステムを新開発
WECは、2014年シーズンからレギュレーションを改定することになっている。TS040 HYBRIDは、この新レギュレーションに合わせて開発された。
例えば、従来はエンジン排気量や吸気を制限するリストリクター、燃料タンク容量などで性能を制限していたが、2014年シーズンからは燃料の消費量が基準となった。レース中、直近3ラップから計測した1ラップ当たりの平均燃料消費量が規定を上回ると、ペナルティが科せられる。燃料消費量の規定は、各レースチームが申告したハイブリッドシステムの使用率によって決まる。TS040 HYBRIDは、ル・マンサーキットの1ラップにつき6Mジュールまでの回生量が得られるハイブリッドシステムを採用することになった。
2014年シーズンのレギュレーション改定では、このハイブリッドシステムによる回生量の上限が大幅に増えたことも特徴となっている。従来は、ル・マンサーキットの1ラップにつき3.5Mジュールだったので、ハイブリッドシステムから約2倍の出力が得られることになる。
2012〜2013年シーズンに使用していた「TS030 HYBRID」では、後輪側のギヤボックス内に搭載したデンソー製のモーター兼発電機(MGU)だけでブレーキ回生と力行(走行のためのモーター駆動)を行っていた。最高出力は300ps(221kW)である。TS040 HYBRIDでは、前輪シャフト部に配したアイシン・エイ・ダブリュ製のMGUと、後輪側のデンソー製MGUの両方を使って、ブレーキ回生と力行を行う。これら2個のMGUを合計した最高出力が480psとなるのだ。なお、ブレーキ回生による電力をためる蓄電デバイスは、TS030 HYBRIDと同様に日清紡製の電気二重層キャパシタを採用している。
排気量3.7lエンジンと2個のMGUを連動させるレースカー用のハイブリッドシステム「トヨタ・ハイブリッド・システム・レーシング(THS-R)」の開発は、トヨタ自動車の東富士技術研究所のモータースポーツユニット開発部が担当した。
車体の設計/開発/製造は、欧州モータースポーツ拠点であるToyota Motorsport(TMG)が行った。レギュレーション変更に合わせて、TS030 HYBRIDと比べて全幅を10cm狭めるとともに、タイヤ幅が5cm小さくなることで低下する路面へのグリップ力を補えるようにダウンフォースも高めた。
これらの新規開発によって、TS040 HYBRIDの燃料消費量は、TS030 HYBRIDと比べて25%削減できるという。
アウディ、ポルシェとの争いに注目
2014年シーズンは、ドライバーの入れ替えはないものの、チーム編成が変更になった。7号車は、アレックス・ブルツ、ステファン・サラザン、中嶋一貴、8号車はアンソニー・デビッドソン、ニコラス・ラピエール、セバスチャン・ブエミの各氏が乗車する。2013年シーズンで8号車に乗車していたサラザン氏が7号車に、7号車に乗車していたラピエール氏が8号車に乗り換えることとなった。
2014年シーズンの開幕戦は、4月20日に決勝が行われる「シルバーストーン6時間レース」となる。トヨタ自動車と同様にハイブリッドレースカーで参戦する、3連覇中のAudi(アウディ)や、久々にWECに復帰するPorsche(ポルシェ)との争いには注目が集まりそうだ。
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