運転中のドライバーの脳活動を可視化、高速道路の交通安全対策評価に活用:医療機器ニュース
中日本高速道路は、脳機能近赤外線分析測定法(fNIRS、エフニルス)装置を車両に搭載し、高速道路を走行するドライバーの脳活動の可視化に成功したと発表した。今回の研究成果を生かすことで、高速道路における交通安全対策を客観的に評価して、より効果の高い施策を実施できるとしている。
中日本高速道路は2014年3月27日、東京大学生産技術研究所、脳の学校と共同で、脳機能近赤外線分析測定法(fNIRS:functional Near-Infrared Spectroscopy、エフニルス)装置を両に搭載し、高速道路を走行するドライバーの脳活動の可視化に成功したと発表した。車両にfNIRSを搭載するのは「世界初」(同社)の試みになる。今回の研究成果を生かすことにより、高速道路における交通安全対策を客観的に評価して、より効果の高い施策を実施できるとしている。
標識や表示板などを使った道路の交通安全対策の評価は、ドライバーが運転後に自分の行動を顧みて記入するアンケートなどの結果を用いるのが一般的だ。しかし、この方法では、記憶の誤りや思い込みが避けられない。ドライバーの運転中の脳活動を可視化できれば、交通安全対策をより客観的に評価できるものの、これまでは実験設備などの制約により車両に搭載するのは難しかった。
fNIRSは、脳機能画像法の1つで、レーザー光を頭の表面から頭内の組織へ照射し、頭内の組織を経由して空間中に出てくる光の強さを、照射点から数cm離れた位置に設置された検出点で計測することにより、脳組織中での血流変化に伴う光量変化や血流変化を引き起こした脳活動の変化を計測できる。装置が小型・軽量かつ可搬であり、測定対象者が体を動かしている最中も脳機能を計測できるため、今回の研究に用いられることとなった。なお、脳血流量の他、脳酸素消費の変化も同時に計測しており、ドライバーの脳活動を多面的に画像化できているという。
fNIRSを搭載しや車両で実証実験を行った。(A)実験車両、(B)車両に搭載されたfNIRSの状態、(C)ドライバーの脳活動をfNIRSで計測している様子、(D)fNIRSの照射点と検出点(クリックで拡大) 出典:中日本高速道路
ドライバーの運転中の脳活動を可視化することにより、運転によって脳にかかる生理的負担や、交通事故を引き起こす要因や交通安全対策の効果を把握できるようになる。例えば、上り坂での速度低下を防ぐ渋滞対策や速度を抑制させる交通安全対策のために用いられている、標識や情報板、道路脇に設置した発光機器の点滅制御(ベクション)の効果測定に利用可能だ。
ベクションの例。道路脇に設置した発光体の光の流れる速度を制御し、ドライバーの速度感覚をコントロールすることで、長い下り坂での速度の出し過ぎや防止や、上り坂やサグ(下り坂から上り坂にさしかかる凹部)での速度の回復を促す機能がある(クリックで拡大) 出典:中日本高速道路
今後、中日本高速道路は、有識者を交えた「交通情報サービス研究会脳科学作業部会」を設置し、今回の研究成果を基に、脳科学の視点から、より効果的な交通安全対策の考案など、安全で走りやすい高速道路を目指して研究を進めていくとしている。
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